くらシム
税金・社会保険

年金生活者支援給付金とは|月5,620円がもらえる3要件「65歳以上・世帯全員非課税・年金収入80.9万円以下」を検算——免除期間がある人は満額納付より増える理由【令和8年度】

年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金に月5,620円(令和8年度基準額・障害1級は7,025円)を上乗せする恒久制度。対象は①65歳以上の老齢基礎年金受給者②世帯全員が住民税非課税③前年の年金収入+所得が809,000円以下の3要件を満たす人で、80.9万円超〜90.9万円以下なら補足的給付金が段階的に出る。計算式「5,620円×納付月数÷480+11,768円×免除月数÷480」の検算、免除期間がある人ほど月額が増える仕組み、9月に届くはがきを放置すると1ヶ月単位で取りこぼす請求ルールまで、日本年金機構の公表資料に沿って解説する。

毎年9月、日本年金機構から緑色の封筒が届く人がいる。中身ははがき型の「年金生活者支援給付金請求書」。氏名と提出日を書いて切手なしで投函するだけの簡単な書類だが、これを「よくわからない案内」として放置すると、年間67,440円(月5,620円)の給付金を受け取り損ねる。しかもこの給付金は、請求が遅れた分を後からさかのぼって受け取ることが原則できない。

年金生活者支援給付金は、2019年10月の消費税率10%への引き上げを財源として始まった恒久的な制度だ。期間限定の給付金ではなく、要件を満たす限り一生涯、2ヶ月に1度、年金と同じ口座に振り込まれ続ける。それでも厚生労働省が繰り返し「請求漏れ」の広報を打つ程度には、対象なのに受け取っていない人がいる。この記事では、誰が・いくら・どうすればもらえるのかを、令和8年度の数字で検算しながら整理する。

結論: 3要件を満たせば月5,620円が基準、免除期間があればさらに上乗せ

老齢年金生活者支援給付金の支給要件は次の3つで、すべてを満たす必要がある。

  1. 65歳以上で、老齢基礎年金を受給している
  2. 同一世帯の全員が市町村民税(住民税)非課税である
  3. 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計が809,000円以下である(昭和31年4月2日以後生まれの場合。昭和31年4月1日以前生まれは806,700円以下)

このときの給付額が、令和8年度の基準額で月5,620円(年67,440円)。令和7年度の5,450円から物価変動率にあわせて3.2%引き上げられた(5,450円 × 1.032 ≒ 5,624円 → 改定ルールに基づき5,620円)。

要件③を少し超えても、いきなりゼロにはならない。809,000円超〜909,000円以下の人には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が段階的に支給される(後述)。また、障害基礎年金・遺族基礎年金の受給者には、住民税非課税要件の代わりに前年所得4,721,000円以下(扶養親族の数に応じて増額)という別建ての要件で、障害1級は月7,025円、障害2級・遺族は月5,620円が支給される。

自分の年金額そのものがいくらになるかは年金受給額シミュレーターで試算できる。給付金はその上に乗る「2階の薄い上乗せ」だと考えるとわかりやすい。

給付額の計算式: 納付期間の分と、免除期間の分の2階建て

老齢の給付金は「月5,620円が一律で出る」わけではない。国民年金の保険料納付済期間保険料免除期間に応じて、次の2つの合計で決まる。

① 保険料納付済期間に基づく額(月額)

```
5,620円 × 保険料納付済月数 ÷ 480月
```

② 保険料免除期間に基づく額(月額)

```
11,768円 × 保険料免除月数 ÷ 480月
```

※11,768円は令和8年度の老齢基礎年金満額(月70,608円)の6分の1(70,608 ÷ 6 = 11,768円)。全額免除・4分の3免除・半額免除の期間に適用され、4分の1免除の期間は12分の1の5,884円で計算する。

40年(480月)フルに納付した人は、①が5,620円 × 480 ÷ 480 = 月5,620円、②が0円。令和8年度の老齢基礎年金満額は月70,608円なので、給付金と合わせて月76,228円が老齢基礎年金部分の受取額になる。

検算: 免除期間がある人は「満額納付の人より多く」なる

直感に反するのが、②の単価11,768円が①の5,620円より高いことだ。納付420月+全額免除60月(未納なし)の人を計算してみる。

  • ①納付分: 5,620円 × 420 ÷ 480 = 4,917.5 → 約4,918円
  • ②免除分: 11,768円 × 60 ÷ 480 = 1,471円
  • 合計: 約6,389円/月(年約76,668円)

40年フル納付の人(5,620円)より月769円多い。これはバグではなく設計どおりで、理由は老齢基礎年金の側にある。全額免除期間は年金額に満額の2分の1(国庫負担分)しか反映されないため、免除期間が長い人ほど基礎年金そのものが少ない。給付金の②は、その目減りを補うために免除月あたりの単価を高く設定している。つまり「基礎年金+給付金」の合計で見ると、免除期間があった人の生活水準を底上げする方向に働く制度になっている。

なお、未納期間はどちらの式にもカウントされない。免除申請をせずに放置した未納と、承認を受けた免除とでは、基礎年金だけでなく給付金でも差がつくということだ。

「809,000円の壁」は崖ではない——補足的給付金の仕組み

前年の年金収入+所得が809,000円を1円でも超えたら給付金ゼロ、という制度設計だと、年金収入がわずかに多い人のほうが手取りで逆転される「崖」ができてしまう。それを防ぐのが補足的老齢年金生活者支援給付金で、809,000円超〜909,000円以下の人に、超過分に応じて減らした額を支給する。

```
月額 = 5,620円 × 納付月数÷480 × (909,000円 − 前年の年金収入等) ÷ 100,000円
```

40年フル納付の人で検算すると、次のようになだらかに減っていく。

前年の年金収入+所得給付の種類月額(目安)年額(目安)
809,000円以下本来の給付金5,620円67,440円
810,000円補足的給付金約5,564円約66,768円
870,000円補足的給付金約2,192円約26,304円
909,000円補足的給付金0円に接近
909,000円超対象外0円0円

例えば870,000円の人は、調整率が (909,000 − 870,000) ÷ 100,000 = 0.39 となり、5,620円 × 0.39 = 2,191.8 → 約2,192円/月。受け取る年金が少し多いせいで総額が逆転する、という事態は起きない設計だ。

注意したいのは、この所得基準額が毎年度の政令で見直され、毎年10月に前年所得で再判定されること。今年対象外でも、翌年の所得次第で対象になる(逆もある)。基準をまたぎそうな人は、毎年9月前後に届く案内を確認する習慣をつけたい。

見落としやすい3つの落とし穴

① 「世帯全員非課税」——自分が非課税でも、同居の子が課税されていればアウト

要件②は本人ではなく世帯単位で判定される。年金収入が少ない親でも、現役で働く子と同一世帯なら対象外。逆に、子が転出して世帯分離した翌年から対象になるケースもある。住民税非課税のラインは自治体の級地区分によって変わるため、境目の人は市区町村の窓口で確認するのが確実だ。なお住民税非課税世帯かどうかは、介護保険料の所得段階など他の負担にも連動する。介護保険料計算シミュレーターで自分の所得段階を確認しておくと、非課税判定の影響範囲がつかめる。

② 繰下げ待機中はもらえない、繰上げ中(65歳未満)ももらえない

給付金は「老齢基礎年金を受給していること」が前提だ。年金を増やすために70歳まで繰下げ待機している間は、老齢基礎年金を受け取っていないので給付金も出ない。しかも給付金自体には繰下げ増額がない。月5,620円 × 5年分(337,200円)を捨てて繰下げるべきかは、年金本体の増額と合わせて損得を見る必要がある。繰上げ受給している人も、給付金の対象になるのは65歳からだ。判断の前に年金の受給開始年齢シミュレーターで本体側の損益分岐を確認してほしい。

③ 請求しないと1円も出ない、そしてさかのぼれない

給付金は年金と違い、請求月の翌月分からしか支給されない。新たに対象になる人には9月ごろから順次、はがき型の請求書が届くが、これを半年放置すれば半年分(5,620円 × 6 = 33,720円)がそのまま消える。一度認定されれば翌年以降の手続きは不要(所得情報で自動判定)なので、負担が重いのは最初の1回だけだ。65歳になって年金を請求するときは、年金請求書と一緒に給付金の認定請求書を出せる。

受け取り方と税・他制度との関係

  • 支払いサイクル: 年金と同じく偶数月の中旬に、前2ヶ月分がまとめて年金と同じ口座に振り込まれる(月5,620円なら1回11,240円)
  • 税金: 給付金は非課税。受け取っても翌年の住民税判定を悪化させない
  • 年金収入の判定への影響: 給付金自体は「公的年金等の収入金額」に含まれないため、給付金を受け取ったせいで翌年の809,000円判定が不利になることもない

老後の家計全体で見ると、月5,620円は食費の1週間分程度だが、年67,440円・10年で67万円と積み上がる。年金だけで生活費が回るかどうかは定年後の生活費シミュレーターで支出側から、収入の組み立ては定年後の収入プランシミュレーターで確認しておきたい。

手続きチェックリスト

  • 自分(または親)が65歳以上で老齢基礎年金を受給しているか
  • 世帯全員が住民税非課税か(同居家族の課税状況まで確認)
  • 前年の年金収入+その他所得が809,000円以下か(909,000円以下なら補足的給付金)
  • 9月前後に日本年金機構から緑色の封筒が届いていないか、親宛の郵便物も含めて確認
  • 届いていれば、はがきに記入してすぐ投函(切手不要)。届かないが要件を満たしていそうなら、ねんきんダイヤルか年金事務所へ
  • これから65歳になる人は、年金請求書と同時に給付金も請求

FAQ

Q. この記事の数字の根拠はどこから?

給付基準額(月5,620円・障害1級7,025円)と改定率3.2%は日本年金機構「令和8年度の年金額および年金生活者支援給付金支給金額の改定について」、支給要件の所得基準(809,000円/909,000円、昭和31年4月1日以前生まれは806,700円/906,700円)と計算式は日本年金機構の年金生活者支援給付金の解説ページおよび厚生労働省の制度資料(2026年4月1日時点)による。免除期間の単価11,768円は令和8年度の老齢基礎年金満額(月70,608円)の6分の1として検算済み。制度の根拠法は年金生活者支援給付金の支給に関する法律(平成24年法律第102号)。

Q. 老齢基礎年金が満額でない人の給付金はいくら?

納付済月数に比例する。例えば納付360月(30年)・免除なしなら 5,620円 × 360 ÷ 480 = 4,215円/月。免除期間があれば本文の②の式で上乗せされる。自分の納付記録は「ねんきん定期便」か「ねんきんネット」で確認できる。

Q. 厚生年金をもらっていても対象になる?

なる可能性はある。判定は「老齢基礎年金を受給しているか」と「前年の年金収入+所得」で行うため、厚生年金を含めた年金収入が809,000円以下(補足的なら909,000円以下)に収まっていれば対象だ。ただし厚生年金の加入期間が長い人は年金収入がこの水準を超えることが多く、実際の受給者は国民年金中心の人が多数を占める。

Q. 数字が実感と合わない場合は?

この記事は昭和31年4月2日以後生まれ・令和8年度の基準額で計算している。生年月日が昭和31年4月1日以前の場合は基準額と所得基準がわずかに異なるほか、所得基準額は毎年10月の判定サイクルで見直される。実際の支給額は日本年金機構から届く支給決定通知書が正となる。記事の計算と大きく食い違う場合は、お問い合わせフォームから連絡いただければ検証する。

この記事の内容をシミュレーションしてみましょう

あなたの条件を入力すると、具体的な数字で結果が分かります

シミュレーターを使う

広告

関連記事

広告