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年金の繰上げ・繰下げ受給を徹底比較|損益分岐年齢と最適な受給開始タイミング

年金の繰上げ受給(60歳〜)と繰下げ受給(〜75歳)の減額率・増額率・損益分岐年齢を解説。受給開始年齢ごとの月額と累計額を比較表で確認できます。

年金はいつから受け取るのがベスト?

老齢年金の受給開始は原則65歳ですが、60歳から75歳の間で自由に選べます。早くもらう「繰上げ受給」は月額が減り、遅くもらう「繰下げ受給」は月額が増えます。どちらが得かは「何歳まで生きるか」で決まります。

平均寿命(男性81.09歳・女性87.13歳、厚生労働省「令和6年簡易生命表」)を前提にすると、65歳受給か70歳繰下げが最も累計受給額が多くなる傾向にあります。実際、シミュレーターの実装式(月14.5万円・繰上げ月0.4%減/繰下げ月0.7%増)で計算すると、80歳までに亡くなる場合は60歳繰上げ、81歳ちょうどなら65歳受給、82〜91歳なら70歳繰下げ、92歳以降まで生きるなら75歳繰下げが累計額で最有利になります。健康状態・他の収入源・配偶者の有無・老後の資金計画によって最適解は変わります。

まずは年金の繰上げ・繰下げシミュレーターで、あなたの条件で累計額を比較してみましょう。国民年金・厚生年金の見込額がわからない場合年金受給額シミュレーターで年収・加入期間から試算できます。

繰上げ受給の仕組み(60〜64歳)

65歳より前に受給を開始すると、1ヶ月あたり0.4%減額されます。この減額は生涯続きます。

受給開始年齢繰上げ月数減額率月額(65歳時14.5万円の場合)
64歳12ヶ月4.8%約13.8万円
63歳24ヶ月9.6%約13.1万円
62歳36ヶ月14.4%約12.4万円
61歳48ヶ月19.2%約11.7万円
60歳60ヶ月24.0%約11.0万円

2022年4月の制度改正で、減額率が月0.5%から月0.4%に引き下げられました(1962年4月2日以降生まれの方が対象)。

繰下げ受給の仕組み(66〜75歳)

65歳以降に受給開始を遅らせると、1ヶ月あたり0.7%増額されます。

受給開始年齢繰下げ月数増額率月額(65歳時14.5万円の場合)
66歳12ヶ月8.4%約15.7万円
67歳24ヶ月16.8%約16.9万円
68歳36ヶ月25.2%約18.2万円
70歳60ヶ月42.0%約20.6万円
75歳120ヶ月84.0%約26.7万円

2022年の改正で、繰下げの上限が70歳から75歳に延長されました。

損益分岐年齢:何歳で逆転する?

繰上げ・繰下げの損得は、累計受給額で比較すると明確になります。

繰上げ受給(60歳開始)vs 65歳受給

  • 60歳〜64歳の5年間は60歳受給だけがもらえるため、累計額で先行
  • しかし月額の差により、81歳で65歳受給に逆転される(シミュレーター実装値)
  • 81歳以降は差が開く一方

繰下げ受給(70歳開始)vs 65歳受給

  • 65歳〜69歳の5年間は受給額ゼロのため、大きく後れを取る
  • 70歳からの高い月額で追い上げ、82歳で逆転
  • 82歳以降は繰下げの方が有利

繰下げ受給(75歳開始)vs 65歳受給

  • 10年間受給なしのため、逆転には時間がかかる
  • 87歳で65歳受給の累計額を追い越す

受給開始年齢別・損益分岐年齢の早見表(実装値)

年金の繰上げ・繰下げシミュレーターの実装式で、受給開始年齢ごとに「65歳受給と累計額が逆転する年齢」を計算した結果が以下です(新制度・月0.4%減額の場合。開始年齢に関わらず一定のパターンになるため、年金月額には依存しません)。

受給開始年齢月額(14.5万円の場合)65歳受給との損益分岐年齢
60歳(-24.0%)110,200円81歳
61歳(-19.2%)117,160円82歳
62歳(-14.4%)124,120円83歳
63歳(-9.6%)131,080円84歳
64歳(-4.8%)138,040円85歳
66歳(+8.4%)157,180円78歳
67歳(+16.8%)169,360円79歳
68歳(+25.2%)181,540円80歳
70歳(+42.0%)205,900円82歳
72歳(+58.8%)230,260円84歳
75歳(+84.0%)266,800円87歳

繰上げは「損益分岐年齢より前に亡くなれば得」、繰下げは「損益分岐年齢より長く生きれば得」と読みます。なお、1962年4月1日以前生まれ(旧制度・月0.5%減額)の場合、60歳繰上げは月101,500円(-30%)となり、損益分岐は77歳に早まります。

何歳まで生きるかで最有利パターンはこう変わる

60・65・70・75歳の4パターンについて、想定寿命別に累計受給額が最大になる受給開始年齢を実装式で計算すると、次のとおりです(月14.5万円・新制度)。

想定寿命累計額が最大になる受給開始年齢累計受給額
〜80歳60歳繰上げ2,645万円(80歳時点)
81歳65歳受給2,784万円
82〜91歳70歳繰下げ2,965万円(82歳)〜5,189万円(91歳)
92歳〜75歳繰下げ5,443万円(92歳)〜

平均寿命(男性81.09歳・女性87.13歳)はあくまで「0歳時点」の平均です。65歳まで生きた人の平均余命は男性約19年(84歳台)・女性約24年(89歳台)とさらに長くなるため、「すでに65歳を迎えて健康な人」にとっては70歳繰下げが有利になる確率は平均寿命の印象より高くなります。

どの受給開始年齢を選ぶべき?

繰上げが向いている人

  • 60〜64歳で収入が途絶え、生活資金が必要
  • 健康上の不安があり、早めに受け取りたい
  • 他の資産や収入と組み合わせて計画している

65歳受給(標準)が向いている人

  • 65歳まで働く予定がある
  • 減額も増額もせず、バランスを取りたい

繰下げが向いている人

  • 65歳以降も働く予定があり、年金なしでも生活できる
  • 長寿の家系で、健康に自信がある
  • 老後の「長生きリスク」に備えたい

注意すべきポイント

税金・社会保険料の影響

年金額が増えると所得税・住民税・国民健康保険料の負担も増えます。繰下げの増額率84%がそのまま手取り増にはならない点に注意が必要です。

加給年金との関係

繰下げ期間中は加給年金が受け取れません。配偶者がいる場合は加給年金の額も含めて検討しましょう。

在職老齢年金

60歳以降も厚生年金に加入して働く場合、給与と年金の合計が一定額を超えると年金が減額される「在職老齢年金」制度があります。支給停止の基準額(給与+年金の月額換算の合計)は2025年度まで月51万円でしたが、2025年成立の年金制度改正法により2026年4月から月62万円に引き上げられました。給与と年金の合計が月62万円以内なら減額されずに全額受給できます。

国民年金のみ(月6.5万円)の場合はどうなる?

自営業などで国民年金(老齢基礎年金)のみを受給する場合も、繰上げ・繰下げの仕組みは同じです。月6.5万円(平均的な受給額)で4パターンを実装式で計算すると次のとおりです。

受給開始年齢月額85歳までの累計損益分岐年齢
60歳(-24%)49,400円1,482万円81歳
65歳(標準)65,000円1,560万円
70歳(+42%)92,300円1,661万円82歳
75歳(+84%)119,600円1,435万円87歳

割合(増減率)ベースの構造は厚生年金と同一なので、損益分岐年齢も変わりません。国民年金のみの場合は月額の絶対値が小さいため、長生きに備えて繰下げで月額を確保する価値が相対的に大きくなります。なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げ時期を選べます(繰上げは同時のみ)。「基礎は65歳から受け取り、厚生だけ70歳まで繰り下げる」といった組み合わせも可能です。

実例:3パターンで累計受給額を比較

月額14.5万円(厚生年金の平均的な受給額)、想定寿命85歳の場合の累計受給額を試算します。

パターン月額年額65〜85歳累計(20年)60〜85歳累計(25年)
60歳繰上げ(-24%)約11.0万円約132万円約3,300万円
65歳受給(標準)14.5万円174万円約3,480万円
70歳繰下げ(+42%)約20.6万円約247万円約3,705万円(70〜85歳)
75歳繰下げ(+84%)約26.7万円約320万円約3,205万円(75〜85歳)

85歳まで生きる場合、最適解は70歳繰下げとなります。一方で、75歳まで生きないと見込む場合は60歳繰上げの方が累計額で有利になります。

繰下げを選ぶなら検討すべき資金戦略

繰下げ受給を選ぶ場合、65歳〜受給開始までの期間の生活費をどう確保するかが重要です。

繰上げ受給の3つの落とし穴

1. 減額が生涯続く

60歳で24%減額した年金は、75歳や85歳になっても24%減のまま。長生きするほど損失が膨らみます。

2. 障害基礎年金・寡婦年金が受けられなくなる

繰上げ受給を始めると、後から障害基礎年金の請求ができなくなるリスクがあります(初診日の時点で65歳未満であっても、繰上げ後は対象外となる場合あり)。

3. 国民年金の任意加入ができなくなる

60歳以降に国民年金に任意加入して年金額を増やすことができなくなります。加入期間が40年に満たない方は特に慎重な判断が必要です。

繰下げ受給の2つの注意点

1. 加給年金が繰下げ期間中は支給停止

配偶者加給年金(令和8年度は特別加算を含め年額423,700円)は、本人の老齢厚生年金を受給開始するまで支給されません。例えば配偶者が5歳年下で厚生年金を70歳まで繰り下げると、約42万円×5年=約210万円の加給年金を受け取り損ねる計算です。配偶者がいる場合は「厚生年金は65歳から受給して加給年金を確保し、基礎年金だけ繰り下げる」という選択肢も含めた総合的な判断が必要です。

2. 税金・社会保険料で手取りは目減り

額面で+84%でも、所得税・住民税・国民健康保険料・介護保険料が増えるため、手取り増加率は+60〜70%程度になることが多いです。

よくある質問(FAQ)

Q1. この記事の計算の前提データはどこから?

繰上げ減額率(月0.4%・1962年4月1日以前生まれは0.5%)は国民年金法附則第9条の2、繰下げ増額率(月0.7%)は同法附則第9条の3に基づく公式の数値です(日本年金機構「年金の繰上げ受給/繰下げ受給」)。月額・累計額・損益分岐年齢の表は、すべて年金の繰上げ・繰下げシミュレーターの実装式(調整後月額=65歳時月額×(1+調整率)を円単位で四捨五入し、12ヶ月×受給年数で累計)をそのまま再現して計算しています。平均寿命は厚生労働省「令和6年簡易生命表」(男性81.09年・女性87.13年)を参照しています。

Q2. 老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げられますか?

繰下げは別々に選べます。「基礎は65歳から・厚生は70歳から」のように分けると、収入の空白を抑えつつ増額も確保できます。配偶者加給年金は厚生年金の繰下げ中に支給停止されるため、「厚生は65歳から受給して加給年金(令和8年度・年423,700円)を確保し、基礎だけ繰り下げる」戦略も有力です。一方、繰上げは基礎・厚生を同時に行う必要があり、片方だけの繰上げはできません。

Q3. 働きながらだと繰下げの増額は減りますか?

在職老齢年金で支給停止された部分は、繰下げても増額の対象になりません。支給停止の基準額は2026年4月に月51万円から62万円へ引き上げられたため、対象になる人は大幅に減りましたが、給与+年金が月62万円を超える高収入の方は「繰り下げても停止部分は増えない」点に注意してください(老齢基礎年金は在職老齢年金の対象外なので、基礎の繰下げ増額には影響しません)。

Q4. 損益分岐年齢は手取りで考えると変わりますか?

変わります。本記事の損益分岐は額面ベースです。年金額が増えると所得税・住民税・国民健康保険料・介護保険料の負担も増え、公的年金等控除の枠を超える部分に課税されるため、繰下げの手取り増加率は額面の増加率より小さくなります(84%増でもおよそ60〜70%増程度)。手取りベースでは繰下げの損益分岐年齢は本記事の表より1〜3歳程度後ろにずれると考えておくと安全です。

Q5. 計算結果が実感と合わない場合は?

実際の年金額は加入期間・標準報酬・物価スライドで個別に決まります。まず「ねんきん定期便」または「ねんきんネット」で自分の見込額を確認し、その金額をシミュレーターに入力し直してください。それでも疑問が残る場合はお問い合わせページからご連絡ください。

関連シミュレーター

※本記事は2026年8月時点の年金制度(2022年4月改正・2026年4月施行の在職老齢年金見直しを反映)に基づいています。制度の詳細や正確な受給額は日本年金機構の「ねんきん定期便」・「ねんきんネット」でご確認ください。

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