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「福岡に3年、家族で行くなら横浜のマンションはどうする?」——転勤の内示を受けた40歳・年収720万円の森本さん(仮名)が4択を39か月で比べると、空き家のまま183万円、単身赴任172万円の持ち出しに対し、定期借家で貸せば170万円のプラス。ただし住宅ローン控除は4年分(89万円)消え、3,000万円控除を使って売れるのは2030年12月31日までだった【ケーススタディ】

家族帯同の転勤で持ち家を「空き家で残す」「定期借家で貸す」「単身赴任で家族を残す」「売る」の4択を、横浜市郊外の3LDK(2019年10月入居・ローン残高3,085万円)で比較。社宅の自己負担・家賃収入と管理委託料・不動産所得の税金・住宅ローン控除の停止と再適用まで含めて39か月の差額を計算した。貸すなら3年以内に売る選択肢を残す契約期間の決め方、銀行への届出、出発前に税務署へ出す届出書もまとめた。

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「3年で戻ってこられる、と人事は言うんです。でも"予定"ですよね」

森本 浩二さん(仮名・40歳)は、10月の初めに福岡支社への異動の内示を受けた。着任は2027年1月。妻の美紀さん(38歳・パート年収100万円)と、小4・小1の子ども2人も一緒に行くことに決めた。

決まっていないのは、横浜市郊外の自宅マンションをどうするかだ。

森本家の前提

項目内容
家族浩二さん40歳(年収720万円)、妻38歳(パート年収100万円)、子ども2人(小4・小1)
自宅横浜市郊外の3LDK・70㎡、2019年10月に新築で入居
購入価格4,200万円(建物2,500万円・土地1,700万円)
住宅ローン3,800万円・35年・変動金利。当初0.6%、2027年からは1.1%で試算
ローン残高2026年末で約3,085万円、2027年からの返済は月107,284円
管理費・修繕積立金月2.8万円
固定資産税・都市計画税年14.4万円(月1.2万円換算)
転勤先の住まい会社の借上げ社宅、自己負担 月2.5万円
不在期間2027年1月上旬に退去〜2030年3月の39か月(2030年4月に帰任予定)

住宅ローン控除は、消費税10%への引上げ後の特例で13年間(2019〜2031年)。年末残高の1%が控除され、11年目(2029年)以降は「建物の税抜価格×2%÷3」との少ない方になる。森本さんの場合、11年目以降は 2,500万円÷1.1×2%÷3 ≒ 年15.2万円だ。所得税と住民税から控除しきれる枠は年33万円ほどあるので、控除は満額使えている。

4択を39か月で比べる

住宅ローンの返済、管理費・修繕積立金、固定資産税は、売らない限りどの選択肢でも同じように出ていく。そこで、その共通部分を除いた「差額」だけを並べた。

選択肢39か月の差額内訳
A. 空き家のまま残す183万円の持ち出し社宅97.5万円+空き家の基本料金11.7万円+住宅ローン控除の停止74.0万円
B. 定期借家で貸す170万円のプラス家賃収入の手取り356.7万円 −社宅97.5万円 −住宅ローン控除の停止89.1万円
C. 単身赴任(家族は横浜)172万円の持ち出し二重生活の純増 月4.4万円×39か月(控除は継続)
D. 売る(2027年1月)約445万円の持ち出し(帰任後に買い直す場合)売買の往復コスト504万円+控除の喪失104万円+社宅97.5万円 −保有コストの節約261万円

AとBの差は約353万円。数字だけ見れば「貸す」が圧倒的だが、それぞれに落とし穴がある。順番に見ていく。

A. 空き家のまま:楽だが、一番もったいない

空き家にしても、ローンも管理費も止まらない。増えるのは社宅の自己負担と、電気・水道の基本料金(月3,000円×39か月=11.7万円)くらいだ。

痛いのは住宅ローン控除だ。控除は「その年の12月31日に住んでいるか」で決まる。家族全員で引っ越すと、引っ越した年から控除は受けられない。森本家が退去を年明けの1月上旬にしたのは、12月中に出ると2026年分(約30.9万円)まで失うからだ。

```
2027年(9年目):年末残高 2,990万円 × 1% = 29.9万円
2028年(10年目):年末残高 2,894万円 × 1% = 28.9万円
2029年(11年目):min(2,796万円×1%, 15.2万円) = 15.2万円
停止する控除の合計 = 74.0万円
```

帰任して2030年4月から住めば、2030年分(12年目)と2031年分(13年目)は控除を再び受けられる。13年の期間が延びるわけではないので、止まった3年分はそのまま失われる。

B. 定期借家で貸す:収入は大きいが、条件がつく

周辺の同じ規模の3LDKは、普通の賃貸借契約なら月14万円前後。森本さんは「3年後に必ず戻れる」ことを優先して、期間満了で終わる定期借家契約にした。その分、家賃は月12.5万円と1割強安く設定する。管理は転勤者向けのリロケーション会社に任せる。

```
家賃収入:12.5万円 × 36か月(2027年3月〜2030年2月)= 450.0万円
管理委託料:家賃の10%+税 = 1.375万円 × 36か月 = −49.5万円
入居者募集の広告料:家賃1か月分+税 = −13.75万円
退去後のクリーニング・修繕(経年劣化分)= −25.0万円
不動産所得の税金(3年強の合計)= −5.1万円
手取り = 356.7万円
```

税金が小さいのは、家賃から管理費・固定資産税・ローン利息の建物部分・減価償却費(建物2,500万円×0.022=年55万円)を引くと、不動産所得が年11〜12万円程度しか残らないからだ。初年度は広告料があるので赤字になる。

ただし控除は1年多く止まる。帰任した年に貸していた期間があると、再適用はその翌年からになるためだ。2030年の1〜2月に入居者がいたので、2030年分(15.2万円)も受けられず、停止は合計89.1万円になる。

もう1つの前提は銀行だ。住宅ローンは「本人が住むこと」が条件で、無断で貸すと契約違反になりうる。転勤のようなやむを得ない理由なら、届け出て承諾を得れば住宅ローンのまま貸せる金融機関が多い。森本さんの銀行もそうだったが、もし事業用ローンへの借換えを求められて金利が2.5%になった場合を試すと、

```
(2.5% − 1.1%)× 残高 約2,950万円 × 3年 ≒ 124万円の利息増
```

それでもBは差額+46万円で、AとCより有利なままだった。

C. 単身赴任:控除は守れるが、二重生活は高い

家族が横浜に残れば住宅ローン控除は続く。その代わり生活が2つに割れる。当サイトの単身赴任のケーススタディでは、住居・光熱・通信・帰省・食費の純増が月7.4万円、手当3万円を引いても月4.4万円の持ち出しだった。39か月で172万円。

お金ではAとほぼ同じ。子どもの転校を避けたい、妻の仕事を続けたいなど、お金以外の理由で選ぶ選択肢になる。社宅と自費で家を借りる場合の負担差は社宅 vs 賃貸の比較シミュレーターで確かめられる。

D. 売る:戻るなら最も高くつく

退去直後の2027年1月に4,800万円で売れるとする。仲介手数料は(4,800万円×3%+6万円)×1.1=165万円、登記・印紙などを入れて約168万円。ローンを完済して手元に約1,546万円が残る。

税金はかからない。取得費は購入価格から自宅として住んだ7年分の減価償却(2,500万円×0.9×0.015×7年=236万円)を引いた3,964万円で、譲渡益は約668万円。マイホームを売ったときの3,000万円特別控除の範囲に収まる。売却にかかる費用と税金は不動産売却の費用シミュレーターと不動産売却の税金シミュレーターで、自分の物件の数字に置き換えられる。

問題は3年後に買い直す場合だ。同じ価格帯の家を買うと、諸費用が物件価格の7%として336万円。売りと買いの往復だけで約504万円かかり、残り5年分の住宅ローン控除(104万円)も手放す。保有コスト(管理費・固定資産税・利息で約261万円)が浮いても、差し引き約445万円の持ち出しだ。しかも3年後の価格と金利は誰にも分からない。

Dが合理的なのは「もう横浜には戻らない」と分かっている場合だけになる。

見落としやすい期限:3,000万円控除は「住まなくなってから3年目の年末」まで

Bを選んだ森本さんが一番気にしたのは、「結局戻らなかったら?」だ。転勤が延びたり、福岡に定住したくなったりすることはある。

マイホームの3,000万円特別控除は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば、その間に貸していても使える。2027年1月に退去した森本さんは、3年を経過するのが2030年1月なので、期限は2030年12月31日だ。

この期限を過ぎて2031年に売ると、どうなるか(賃貸期間3年の場合)。

```
取得費 = 4,200万円 − 自宅期間の償却236万円 − 賃貸期間の償却165万円 = 3,799万円
譲渡益 = 4,800万円 − 3,799万円 − 売却費用168万円 = 833万円
税金(所有5年超の長期譲渡:20.315%)≒ 169万円
```

期限の前か後かで、約169万円違う。

定期借家の契約は2030年2月に満了するので、予定どおりなら期限まで10か月の余裕がある。危ないのは転勤が延びたときだ。「もう1年」と言われて同じ感覚で再契約を結ぶと、入居者がいるまま2030年が終わり、空室にして売る選択肢が消える(入居者付きのまま投資用として売ると価格が下がりやすい)。

そこで森本さんは、再契約するなら2030年中に満了する期間にすると決め、「延長の打診があったら、その時点で売るか戻るかを決める」と夫婦で話し合っておいた。

出発前にやること(森本さんのチェックリスト)

  1. 銀行に転勤を理由とした賃貸の可否を確認し、承諾を書面でもらう
  2. 税務署に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を出し、未使用の年末調整用の証明書を添付する(帰任後の再適用に必要)
  3. 定期借家の満了日と、3,000万円控除の期限(2030年12月31日)をカレンダーに並べて書いておく
  4. 火災保険を貸主用に切り替え、家財は引越し先の保険に移す
  5. 2027年分から不動産所得の確定申告が必要になるので、管理会社の収支報告と固定資産税の通知書を保管する(固定資産税の額は固定資産税シミュレーターでも目安がつかめる)

よくある疑問

Q. 転勤から戻った後、住宅ローン控除の手続きは?
帰任して再び住み始めた年(貸していた期間があればその翌年)の分は、確定申告で再適用を受ける。2年目以降は年末調整に戻れる。出発前の届出書がないと再適用できないので、2だけは必ず済ませておきたい。

Q. 家賃は普通借家で高く貸したほうが得では?
普通借家にすると、帰任しても入居者に退去を求めるのは難しい。月1.5万円高く貸せても、戻る家がなくなれば元も子もない。戻る予定がある限り、定期借家の家賃差は「確実に戻るための保険料」と考えるのが森本さんの結論だった。

Q. この計算の前提データはどこから?
住宅ローン控除の期間・控除額(13年特例、11年目以降の建物価格×2%÷3)と再適用の条件、3,000万円特別控除と取得費の計算(非事業用の償却率0.015・0.9掛け)、長期譲渡所得の税率20.315%は国税庁タックスアンサーの記載に基づく。家賃相場・管理委託料・広告料・売却価格・諸費用7%は、横浜市郊外の一般的な水準から置いた仮定値だ。

Q. 数字が実感と合わない場合は?
家賃相場や売却価格は駅距離や築年数で大きく変わり、Bの優位も家賃次第で縮む。目安として、家賃が月9万円ならBの手取りは約253万円、差額は+67万円になり、Aとの差は約250万円まで縮む。前提が合わないと感じたら、各シミュレーターのページ下部から計算結果の報告を送ってもらえると助かる。

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森本さんの答えは「定期借家で貸す、延長なら2030年中に売るか戻るかを決める」だった。数字の差は大きいが、決め手になったのは「戻るか売るかの判断を3年後に持ち越せる」ことだったという。

あなたの家なら、手放さずに残す価値はどこにあるだろうか。家賃相場、帰任の確度、そして3,000万円控除の期限——この3つを並べると、答えはかなり絞られるはずだ。

  • 国税庁 タックスアンサー「住宅借入金等特別控除」(消費税10%適用住宅の13年特例)、「転任の命令等により居住しないこととなった場合(住宅借入金等特別控除)」
  • 国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」、「取得費となるもの」、長期譲渡所得の税額の計算
  • 国税庁「減価償却資産の耐用年数表」(鉄筋コンクリート造の住宅用47年)

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