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「2人目の壁」は手取り96万円減だった——29歳・世帯年収750万円の共働き夫婦が育休と復帰後の家計を全部計算した【ケーススタディ】

2人目を迷う29歳・世帯年収750万円の共働き夫婦のケーススタディ。妻の産休・育休13ヶ月で世帯手取りは約96万円減るが、出産手当金48万円+育児休業給付金132万円で約65%は公的給付でカバーされる。保育料の第2子半額、児童手当月2.5万円、教育費2人分約1,700万円まで、家計が回るかを6つのシミュレーターで検証した。

96万円。 妻が2人目の出産で産休・育休を13ヶ月取ったとき、世帯の手取りから消える金額の試算結果だ。

さいたま市南区の賃貸2LDKに住む田村さん夫婦(仮名)は、長女が2歳になった今年の春から「2人目をどうするか」を話し合ってきた。妻・沙織さん(29歳・医療事務)の口癖は「気持ちは決まってる。決まってないのはお金」。夫・健太さん(31歳・物流会社の生産管理)は「みんな何とかなるって言うけど、何とかなる根拠を数字で見たい」と譲らない。

そこで二人は、収入減・出産費用・保育料・教育費の4つを順番にシミュレーターで計算した。この記事はその記録である。

田村家のプロフィール

項目夫・健太さん妻・沙織さん
年齢31歳29歳
職業物流会社・生産管理クリニック医療事務(正社員)
年収(額面)430万円320万円(月給22万円+賞与)
世帯年収750万円
住まいさいたま市南区・賃貸2LDK(家賃10.3万円)
子供長女・芽生(2歳・保育園2歳児クラス)
金融資産現預金260万円+NISA130万円=390万円

手取り計算シミュレーターで確認すると、世帯の手取りは年約590万円。月給ベースでは夫20.8万円+妻17.4万円の約38万円で、毎月の黒字は6〜7万円。賞与を合わせた年間貯蓄は約200万円ペースだ。「1人ならむしろ余裕がある。問題は2人目で何が起きるかだった」と健太さんは言う。

計算①:育休13ヶ月で収入はいくら減るのか

仮に来年(2027年)4月に第二子を出産するとすると、沙織さんの休業は産前休業が始まる2027年2月末から、保育園の1歳児クラスに入園する2028年4月までの約13ヶ月になる。

この間、給与はゼロになるが、代わりに2つの公的給付が入る。

出産手当金(健康保険)は、産前42日+産後56日の計98日分。

```
日額 = 標準報酬月額 22万円 ÷ 30 × 2/3 ≒ 4,890円
4,890円 × 98日 ≒ 約48万円
```

育児休業給付金(雇用保険)は、育休開始から180日間は賃金の67%、それ以降は50%。

```
休業開始時賃金日額 = 直近6ヶ月の月給 22万円 × 6 ÷ 180 ≒ 7,330円
180日まで: 7,330円 × 30日 × 67% ≒ 月14.7万円
181日以降: 7,330円 × 30日 × 50% ≒ 月11.0万円
```

時系列で並べるとこうなる。

期間制度受け取れる額
2027年2月末〜5月末(98日)出産手当金(2/3)約48万円
2027年5月末〜11月末(180日)育児休業給付金 67%月約14.7万円 × 6ヶ月 ≒ 約88万円
2027年12月〜2028年3月(約4ヶ月)育児休業給付金 50%月約11.0万円 × 4ヶ月 ≒ 約44万円
合計約180万円

同じ13ヶ月を普通に働いた場合の手取りは、賞与込みで約276万円(年間手取り約253万円 × 13/12)。つまり手取りの減少は約96万円、逆に言えば約65%は公的給付でカバーされる。出産手当金も育児休業給付金も非課税で、休業中は本人・会社とも社会保険料が免除されるため、この比較はそのまま手取り同士の比較になる。

「『1年休むと収入ゼロ』のイメージだったので、96万円という数字を見て正直ほっとした」と沙織さん。自分の給与額で確かめたい人は育休手当シミュレーター出産手当金シミュレーターで同じ計算ができる。

なお健太さんも、出生直後に産後パパ育休を28日取る予定だ。2025年4月に始まった出生後休業支援給付金により、夫婦ともに14日以上育休を取ると最大28日間は給付率が67%+13%=80%になり、社会保険料免除と非課税効果を合わせると手取りはほぼ10割。「収入が減らずに28日休めるなら取らない理由がない」というのが夫婦の結論だった。

計算②:出産費用そのものは大きな負担にならない

出産費用の全国平均は正常分娩で約51万円(厚生労働省・出産費用の見える化等の調査より)。これに対して出産育児一時金が50万円支給されるため、持ち出しは数万円で済むケースが多い。さいたま市周辺の病院相場(53〜56万円)で見ても、自己負担は5万円前後。ベビー用品は長女のお下がりが使えるため、買い足しは5〜8万円と見積もった。詳細は出産費用シミュレーターで地域・分娩方法別に確認できる。

つまり田村家にとって、出産そのものは「貯蓄390万円を脅かすイベントではない」。本丸は復帰後の固定費だ。

計算③:復帰後の保育料は「2人分」にならない

沙織さんが最初に身構えたのが保育料だった。現在、長女の2歳児クラスの保育料は月4.1万円。「これがもう1人分増えたら月8万円超え」と思っていたが、保育料シミュレーターで計算すると様子が違った。

  • 長女は2028年4月から3歳児クラス。幼児教育・保育の無償化の対象になり、保育料は0円(副食費など月7,000円程度は残る)
  • 次子は1歳児クラスに入園。きょうだいが同時に保育園等に通う場合、0〜2歳児クラスの第2子は国の基準で半額。月4.3万円相当の半額で約2.2万円

結果、保育料の負担は現在の月4.1万円から月2.9万円へむしろ減る。「一番怖かった数字が、実は減る側だったのは想定外だった」(沙織さん)。

児童手当も追い風になる。2024年10月の拡充で所得制限が撤廃され高校生年代まで延長されたため、3歳の長女に月1万円+0〜2歳の次子に月1.5万円の計月2.5万円。1人あたり0歳から18歳年度末までの総額は約234万円、2人で約468万円になる。世帯ごとの受給総額は児童手当シミュレーターで計算できる。

3つの局面で月次家計はこう動く

ここまでの数字を月次収支に落とし込む。復帰後の沙織さんは時短勤務(年収換算260万円・手取り月14.6万円)を選び、2025年4月開始の育児時短就業給付(時短中の賃金の10%・非課税)で月約1.8万円が上乗せされる前提だ。

項目現在育休中(67%期)復帰後(時短)
夫の手取り20.8万円20.8万円20.8万円
妻の手取り/給付17.4万円14.7万円14.6万円+時短給付1.8万円
児童手当1.0万円2.5万円2.5万円
収入計39.2万円38.0万円39.7万円
家賃10.3万円10.3万円10.3万円
保育料・園諸費4.1万円4.1万円2.9万円
食費・日用品・育児用品7.3万円8.4万円8.7万円
水道光熱・通信2.5万円2.9万円2.7万円
保険1.2万円1.2万円1.4万円
小遣い・交際・雑費6.0万円5.2万円5.7万円
支出計31.4万円32.1万円31.7万円
月次収支+7.8万円+5.9万円+8.0万円

月次だけ見れば、3つの局面すべてで黒字を維持できる。ただし落とし穴は賞与だ。育休中は妻の賞与(手取り年約44万円)が消えるため、年間の貯蓄ペースは約200万円から約120万円に落ちる。給付金の初回入金は申請から2〜3ヶ月後にずれ込むことも多く、その間の立て替え分として生活費3ヶ月分(約100万円)は現預金で確保しておく——これが二人の決めたルールになった。

計算④:本当の山は10年後の教育費

最後に、2人分の教育費を教育費シミュレーターで長期視点に置き直した。文部科学省「子供の学習費調査(令和5年度)」によると、学校外活動費まで含めた年間の学習費は公立小で約35万円、公立中で約55万円、公立高で約60万円。幼稚園から高校まですべて公立なら1人約600万円、すべて私立なら約2,000万円に達する。

大学は国立4年間で約243万円(入学金28.2万円+授業料53.6万円×4年・標準額)、私立文系なら約410万円(文部科学省「私立大学等の入学者に係る初年度学生納付金等調査」から試算)。

  • 全公立+国立大コース: 1人約850万円 × 2人 = 約1,700万円
  • うち児童手当でカバーできるのは2人で約468万円(約27%)
  • 残り約1,230万円を、下の子が大学を卒業するまでの約23年で準備 → 月4.5万円ペース

「月4.5万円」は現在の貯蓄ペース(月7.8万円+賞与)の範囲に収まる。児童手当の月2.5万円を全額NISAの積立に回し、足りない分を月2万円上乗せする形で、教育費の器は作れる計算になった。

田村家の結論と、この夏やることリスト

数字を全部並べた夜、健太さんは「『何とかなる』ではなく『この条件なら回る』に変わった」と話した。田村家が出した条件付きの結論は次の3つに集約される。

  • [ ] 現預金100万円を「給付金が入るまでの立て替え枠」として別口座に確保する
  • [ ] 夫の産後パパ育休28日を会社に申請する(手取りほぼ10割の期間をフル活用)
  • [ ] 児童手当2.5万円+2万円の月4.5万円をNISAの教育費積立として自動化する
  • [ ] 復帰後の時短期間は「世帯手取りが現状維持に近い」ことを確認済み。3歳になったらフルタイム復帰を再検討する
  • [ ] 保険は掛け捨ての死亡保障を夫に上乗せ(子2人分の遺族保障ギャップを埋める)

2人目の壁の正体は、田村家の場合「13ヶ月で96万円」だった。壁の高さは世帯ごとに違う。自分の数字に置き換えるなら、収入面は育休手当シミュレーター、支出面は保育料シミュレーターから始めるのが近道だ。

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