副業バイトは「何時に入るか」で時給が変わる——本業8時間の会社員が時給1,300円で月5万円稼ぐと、平日夜・早朝・土曜は1,625円で月31時間、深夜は1,950円で月26時間。会社に本業を申告しないと1,300円のまま月38時間かかる【労働時間通算・5択比較】
本業で1日8時間・週40時間働いている会社員が副業でアルバイトをすると、労働基準法38条の「労働時間の通算」により副業先の勤務はほぼすべて法定時間外になり、25%の割増賃金がつく。22〜5時ならさらに深夜割増25%が乗って50%。時給1,300円・月5万円を目標に、平日夜・深夜・早朝・土曜・業務委託(デリバリー等)の5つの時間帯・働き方を、額面時給・必要時間・手取り時給で比較した。本業の残業(時給2,344円)との比較と、時間帯を選ぶフローチャート付き。
本業で毎日8時間働いたあと、夜にコンビニで3時間働く。この3時間の時給はいくらが正しいだろうか。
求人票に「時給1,300円」と書いてあれば1,300円、と考える人が多い。ところが労働基準法のルールどおりに計算すると、答えは1,625円になる。本業と副業の労働時間は「通算」され、副業の3時間はすべて1日8時間を超えた「時間外労働」になるからだ。夜22時を過ぎれば深夜割増も重なり、1,950円まで上がる。
この記事では、本業がある会社員が副業でアルバイトをするとき、どの時間帯に入るかで時給・必要時間・手取りがどう変わるかを5択で比較する。
比較の前提——月給30万円の会社員が「月5万円」を目指す
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| 本業 | 会社員・月給30万円(賞与なし、年収360万円)、平日9〜18時(実働8時間・週40時間) |
| 本業の時給換算 | 30万円 ÷ 月平均所定160時間 = 1,875円 |
| 副業 | 都内のアルバイト、求人票の時給1,300円(東京都の最低賃金1,280円をやや上回る水準) |
| 目標 | 副業で額面月5万円(年60万円) |
| 前提 | 副業先に本業の労働時間を申告し、副業先が法律どおり割増を払う |
最後の「前提」が、この記事の最大のポイントになる。後半で「申告しなかった場合」も並べる。
なぜ副業の時給が上がるのか——労働時間通算の3ルール
労働基準法38条1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めている。厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で、会社が別々でもこの通算が適用されると整理している。押さえるべきルールは3つ。
- 1日8時間・週40時間は、本業と副業の合計で判定する。 本業で8時間働いた日は、副業の1時間目から法定時間外になる
- 通算の順番は「契約した順」が先。 まず所定労働時間を契約の早い順に足すので、本業より後に契約した副業は、たとえ朝6時に本業より先に働いても時間外扱いになる
- 割増賃金を払うのは、法定時間を超えさせた側の会社。 後から契約した副業先が25%の割増を払う
一方、深夜割増(22〜5時に25%)は通算と関係なく、その時間に働けば必ずつく。また、法定休日(週1日)の35%割増は会社ごとに判定するので通算されない。
計算式にすると次のとおり。
- 時間外のみ:1,300円 × 1.25 = 1,625円
- 時間外+深夜:1,300円 × (1 + 0.25 + 0.25)= 1,950円
5つの時間帯・働き方を比較する
月5万円に必要な時間は「50,000円 ÷ 額面時給」で出る。手取り時給は、本業年収360万円に副業給与60万円を足したときに増える所得税・住民税(年72,500円、副業収入の約12%)を差し引いて計算した。
| 選択肢 | 割増の内訳 | 額面時給 | 月5万円に必要な時間 | 回数の目安 | 手取り時給 |
|---|---|---|---|---|---|
| A. 平日夜 19〜22時 | 時間外25% | 1,625円 | 30.8時間 | 3時間×月10〜11回 | 約1,429円 |
| B. 深夜 22〜翌2時 | 時間外25%+深夜25% | 1,950円 | 25.6時間 | 4時間×月6〜7回 | 約1,714円 |
| C. 早朝 6〜8時(出社前) | 時間外25% | 1,625円 | 30.8時間 | 2時間×月15〜16回 | 約1,429円 |
| D. 土曜 9〜18時 | 時間外25%(週40時間超) | 1,625円 | 30.8時間 | 8時間×月4回 | 約1,429円 |
| E. 業務委託(デリバリー等) | なし(雇用ではない) | 時給換算1,300円 | 38.5時間 | 稼働次第 | 約993円 |
いくつか補足しておく。
- Cの早朝は、5時より前に入ると深夜帯になる。 4〜5時の1時間は時間外+深夜で1,950円、5時以降は1,625円。逆に「早朝手当」は法律上の義務ではなく、会社が任意に出すものだ
- Dの土曜は「本業で週40時間働いた週」が前提。 祝日がある週は本業の時間が減るので、その分は割増がつかない時間が出る
- Eの業務委託は労働基準法の対象外。 通算も深夜割増もない。手取り時給は、ガソリン代・通信費などの経費を売上の10%と置き、給与所得控除が使えない(雑所得・事業所得になる)分も反映した
年間で見ると、時間の差は154時間
AとBを比べると、同じ年60万円を稼ぐのに必要な時間は、Aが年369時間、Bが年308時間。Bは61時間少ない。さらに後述の「申告しないケース(1,300円のまま)」なら年462時間かかり、Bとの差は年154時間、1日8時間換算で約19日分になる。
ただしBの深夜は、翌朝9時に本業がある。2時に上がって睡眠は5〜6時間が限度で、週2回が続けば本業のパフォーマンスに響く。時給の高さは、身体の負担の対価でもある。
本業を申告しないと、どうなるか
通算は「副業先が本業の労働時間を把握している」ことが前提になる。ガイドラインでは労働者からの自己申告で把握するとしており、申告しなければ副業先は割増の必要性を知りようがない。
| ケース | 平日夜(A) | 深夜(B) |
|---|---|---|
| 本業を申告し、割増が払われる | 1,625円 | 1,950円 |
| 申告しない(通算されない) | 1,300円 | 1,625円(深夜割増のみ) |
| 月5万円に必要な時間(申告しない場合) | 38.5時間 | 30.8時間 |
もう一つの現実として、副業先からすると「本業がある人を雇うと人件費が25%上がる」ことになる。そのため、厚生労働省は事前に労働時間の上限を決めておく「管理モデル」という簡便な方法を示している。管理モデルでは、後から契約した副業先は自社での労働時間すべてに時間外割増を払う。面接で「管理モデルで雇えますか」と聞けば、話が早い。
なお、副業先が時間外労働をさせるには、その会社で36協定が結ばれている必要がある。また、時間外労働の上限(単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内)は本業と副業を通算して判定する。この記事の例で本業の残業が月20時間なら、副業30.8時間と合わせて月50.8時間で、上限の範囲に収まる。
そもそも本業の残業のほうが高い
比較表に入れなかった「6つ目の選択肢」がある。本業の残業だ。
- 本業の残業時給:1,875円 × 1.25 = 2,344円
- 月5万円に必要な時間:50,000円 ÷ 2,344円 = 21.3時間
深夜バイト(1,950円)より約400円高く、通勤も新しい人間関係もいらない。ただし本業の残業代には社会保険料(約15%)もかかるので、手取りの差はやや縮む。残業がつかない職場や、残業を増やせない人にとって、副業バイトの時間帯選びが意味を持つ。自分の残業単価は残業代シミュレーターで確認できる。
時間帯を選ぶフローチャート
```
本業で残業を増やせる?
├─ はい → まず本業の残業(時給2,344円)
└─ いいえ
└─ 副業先に本業の労働時間を申告できる?
├─ いいえ → 割増は深夜帯のみ。B(1,625円)かA・C・D(1,300円)
└─ はい
└─ 翌朝の本業に響かない睡眠を確保できる?
├─ はい、週1〜2回なら → B. 深夜(1,950円・月26時間)
└─ いいえ
├─ 平日に細かく分けたい → A. 平日夜 or C. 早朝
└─ 平日は休みたい → D. 土曜(月4回)
```
E(業務委託)は時給効率では最下位だが、「好きな日に30分だけ」が許されるのは業務委託だけだ。通算の管理も不要なので、本業の会社が雇用型の副業を禁止しているケースの受け皿になる。
よくある質問
Q. 副業のバイト代から引かれる税金はいくら?
2か所目の給与は「乙欄」で源泉徴収される。社会保険料控除後の月給が88,000円未満なら税率は3.063%で、月5万円なら約1,500円。年間の副業給与が20万円を超えるので確定申告が必要になり、そこで精算される。本業年収360万円の場合、年60万円の副業で増える税金は所得税24,500円・住民税48,000円の計72,500円だった。本業の年収や働き方を変えて試すならダブルワーク手取りシミュレーターが使える。
Q. 住民税で本業の会社に副業がわかる?
副業が給与(アルバイト)の場合、住民税は原則として本業の給与から天引き(特別徴収)される。本業の住民税額が増えるので、会社が気づく可能性はある。業務委託のような給与以外の所得なら、確定申告書で住民税を「自分で納付(普通徴収)」にできる。
Q. 割増の通算ルールはなくなると聞いた
厚生労働省の研究会が2025年1月の報告書で「割増賃金の支払いについては通算を要しないよう制度改正に取り組むことが考えられる」と提言し、労働政策審議会で議論が続いている。ただし2026年10月時点で労働基準法の改正法案は国会に提出されておらず、現行ルールでは通算が必要だ。改正されれば、この記事のA・C・Dの割増はなくなり、Bの深夜割増だけが残る。
Q. この計算の前提データはどこから?
割増率は労働基準法37条と「割増賃金令」(時間外25%・休日35%の最低限度を定める政令)、通算は同法38条1項と厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」、東京都の最低賃金は2026年10月改定の1,280円、税額は令和8年分の所得税(基礎控除の引上げ後)と住民税で計算した。深夜手当そのものの計算は深夜手当シミュレーターで時給と時間を入れれば確認できる。
Q. 数字が実感と合わない場合は?
求人の時給、本業の所定労働時間、賞与の有無で結果は変わる。たとえば本業が週35時間の会社なら、副業の最初の数時間は週40時間に届かず割増がつかない日が出る。計算の誤りや、実態と離れていると感じる点があれば、各シミュレーターの「計算結果を報告」から知らせてほしい。
最後に——あなたの「1時間」はいくら?
同じ求人票の「時給1,300円」でも、本業がある人にとっては1,300円にも1,625円にも1,950円にもなる。差を生むのは、時間帯の選び方と、副業先に本業の労働時間を伝えるかどうかだ。
副業を探す前に、次の3つの数字を手元に用意しておくと判断が速い。
- 本業の残業時給(残業代シミュレーター)
- 住んでいる地域の最低賃金と、求人時給の水準(最低賃金 比較シミュレーター)
- 本業の月給を時給に直した金額(時給換算シミュレーター)
この3つと比べて、それでも副業の1時間に価値があるか。月26時間と月38時間の差は、睡眠や家族との時間にそのまま跳ね返ってくる。
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- 労働基準法 第32条・第37条・第38条第1項
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)および同Q&A
- 厚生労働省「労働基準関係法制研究会 報告書」(2025年1月)
- 東京労働局「東京都最低賃金」(2026年10月1日発効 1,280円)
- 国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」乙欄、「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)」