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東京から長野・松本市へ移住した40歳IT夫婦の3年キャッシュフロー|住居費は浮いたが車2台で帳消し?【ケーススタディ】

世帯年収870万円・小学生2人を抱える40歳・38歳夫婦が、東京都世田谷区の賃貸(家賃17万円)から長野県松本市の中古戸建てに移住。住居費が月11万円減る一方で、車2台体制・灯油暖房・妻の収入リスクが新たに発生する。6つのシミュレーターで3年分のキャッシュフローを検算し、移住が家計に与えた本当の影響を可視化する。

> 「家賃が月17万円から消える。それだけで月10万円浮くじゃない?」
> 「でも、車を1台じゃ済まないらしいよ松本は。あと冬の灯油代。」
> 「……ちゃんと計算しよう。"なんとなくお得"で動くと、たぶん後悔する。」

2025年8月、世田谷区の3LDK賃貸マンションのリビングで、佐野拓也さん(仮名・40歳・IT企業勤務)と妻の絵里さん(仮名・38歳・在宅Webデザイナー)はExcelを開いた。リモート勤務が完全定着し、出社は月1回。長野県松本市出身の絵里さんが「実家近くに戻りたい」と相談したのは半年前だ。

この記事は、佐野家が移住の意思決定をするまでの3ヶ月と、実際に移住した2026年1月から1年4ヶ月の家計実績、そして残り2年弱の見通しまでを、6つのシミュレーターと実支出データで追った記録である。

「東京を離れたら家計が楽になる」というイメージは、半分本当で半分は誇張だ——というのが佐野家が出した結論だった。

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佐野家のプロフィール

項目夫・拓也(40歳)妻・絵里(38歳)
職業通信系大手のSE(勤続15年・フルリモート)フリーランスWebデザイナー(在宅)
年収(額面)650万円220万円
世帯年収870万円
子ども長男・湊(仮名・10歳・小4)、長女・莉子(仮名・8歳・小2)
移住前の住居東京都世田谷区・3LDK賃貸(築12年)・家賃17万円+管理費5,000円
移住後の住居長野県松本市・中古戸建て4LDK(築17年)・購入価格1,800万円
金融資産現預金420万円+NISA180万円=600万円
移住予定日2026年1月

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ステップ1:移住前の家計を「見える化」する

最初に取り組んだのは、世田谷時代の月次支出の棚卸し。家計簿アプリ12ヶ月分を集計した結果が以下だ。

移住前(東京都世田谷区・2025年・月平均)

費目金額(円)補足
住居(家賃+管理費)175,0003LDK・54㎡
食費88,000外食週2回込み
水道光熱費22,000都市ガス・電気
通信費(スマホ2+光回線)16,000楽天モバイル+ドコモ光
交通費8,000主にバス・電車
子ども費(学童・習い事)38,000学童週5+スイミング+公文
教育費(給食・教材)12,000公立小2人分
保険・医療21,000生命保険・がん保険
衣服・日用品28,000
娯楽・交際32,000帰省含む年平均
その他18,000
支出合計458,000
世帯手取り(拓也42万+絵里15万)約570,000
月の余剰約112,000

「年間134万円は貯められている。悪くない。でも子どもの教育費が本格化する前にもう一段、収支構造を変えたい」——拓也さんは家計の50-30-20ルールで診断したところ、住居費が手取りの30.7%を占めていた。理想は25%以下。住居費削減が家計改善の最大レバーだという見立てが固まる。

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ステップ2:移住後の家計を試算する

長野県松本市は絵里さんの実家がある地方都市。人口約24万人、JR松本駅から車で10分圏内に中古戸建てが豊富にある。佐野夫婦が候補にしたのは、駅から車8分・LDK+4部屋・敷地130㎡の築17年戸建て。1,800万円

想定した住宅ローン条件

項目内容
物件価格1,800万円
諸経費(仲介手数料・登記・火災保険等)約200万円
頭金400万円
借入額1,600万円
金利全期間固定1.5%(フラット35)
期間25年
月返済額約64,000円
固定資産税・都市計画税(年)約14万円(≒月12,000円)
火災保険(年5万円・地震含む)月4,000円

住宅ローン比較シミュレーターで全期間固定 vs 変動を比較したうえで、固定を選択。理由は「移住直後に金利変動リスクを取りたくない」「絵里の収入が不安定」の2点だった。

移住後の月支出見込み(佐野家試算)

費目金額(円)移住前との差
住居(ローン+固定資産税+火災保険)80,000−95,000
食費(地元食材で安く・外食減)75,000−13,000
水道光熱費(灯油代の追加)32,000+10,000
通信費16,0000
交通費(車2台維持)65,000+57,000
子ども費(学童不要・習い事継続)22,000−16,000
教育費12,0000
保険・医療21,0000
衣服・日用品26,000−2,000
娯楽・交際28,000−4,000
その他18,0000
支出合計395,000−63,000

月の支出は6.3万円減、年間76万円の削減見込み。住居費が9.5万円減ったのに、車2台の維持で5.7万円増えるため、差し引きはこの程度に落ち着く——というのが事前試算の結論だった。

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ステップ3:見落としやすい「車2台問題」を真剣に詰める

松本市は車社会。絵里さんの実家ヒアリングでは「車1台では絶対に無理。最低2台、子どもの送迎が増える時期は3台あるとラク」とのこと。

車の生涯コストシミュレーターで2台分の維持費を試算した。

車2台体制の年間コスト(佐野家想定)

項目車A(軽・通勤兼ファミリー兼用)車B(軽・絵里の仕事用)
自動車税10,80010,800
任意保険55,00050,000
車検(2年に1回・年割)35,00030,000
ガソリン代(年間1万km・10km/L)165,000100,000
メンテナンス(オイル・タイヤ等)30,00025,000
駐車場(自宅敷地内・無料)00
年間維持費約296,000約216,000

2台合計で年間51.2万円・月4.3万円。これに購入費の年割(5年で90万円の中古軽×2台=年36万円)を加えると、年間87万円・月7.3万円が車関連で消える。

「東京で電車・バス8,000円/月だったのが、車2台で7.3万円/月になる。差し引き月6.5万円の負担増」——拓也さんは渋い顔をした。

絵里さんの提案で、購入は1台のみ・もう1台は絵里の実家からの譲渡(10万円相場の軽)に切り替え、年間コストを約65万円・月5.4万円まで圧縮することで決着。

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ステップ4:絵里さんの収入リスクを織り込む

絵里さんはフリーランスのWebデザイナー。クライアントは8割が東京・首都圏。「松本に移った瞬間にクライアントが減るかも」というリスクを正面から見積もる必要があった。

3つのシナリオで年収を見積もる

シナリオクライアント維持率絵里さんの想定年収
楽観90%(オンライン完全移行で減少なし)200万円
中立70%(地方移住で2割減)155万円
悲観50%(5割減・地元案件で補填)110万円

3シナリオ中、中立シナリオを家計設計のベースに採用。年収220万→155万への減少(−65万円)を前提に計算し直すと、年間収支は次のように変わる。

移住前後の年間収支比較(中立シナリオ)

項目移住前(東京)移住後(松本)
拓也年収(手取り)510万円510万円0
絵里年収(手取り)180万円130万円−50万円
世帯手取り690万円640万円−50万円
年間支出550万円474万円−76万円
年間貯蓄余力140万円166万円+26万円

絵里さんの収入が2割減っても、住居費削減と外食減で年間26万円分は貯蓄余力が増える。ただし最悪シナリオ(絵里年収110万円)なら年間貯蓄は98万円まで縮む。

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ステップ5:移住の初期コストと回収期間

移住自体の一時コストも忘れずに積み上げる。

移住の初期費用(佐野家・実額)

項目金額(円)
引越し代(東京→松本・3LDK荷物)280,000
中古戸建て購入諸経費(仲介・登記・税金)1,950,000
火災保険5年一括250,000
家電・家具買い足し320,000
子どもの転校手続き・制服等80,000
中古軽自動車1台購入950,000
初期費用合計約3,830,000

頭金400万円とは別に、383万円の一時費用が出ていく。佐野家は移住前に貯蓄600万円のうち、頭金400万+初期費用383万=783万円を取り崩した(一部はNISAから取り崩さず、住宅ローン控除と並行して維持)。

回収期間の計算

中立シナリオで年間貯蓄余力 +26万円増 → 383万円 ÷ 26万円 ≒ 14.7年

「えっ、14年?」と最初は驚いたが、住宅ローン完済時の住居費ゼロ効果(25年後・月8万円相当の住居費が消える)を加味すると、累積効果は20年で約560万円のプラス。長い目で見れば回収は十分可能、というのが家計シミュレーターでの結論だった。

賃貸 vs 持ち家シミュレーターで30年スパンの累積比較を行い、移住・購入を最終決定した。

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ステップ6:移住後1年4ヶ月の実績と"3つの想定外"

2026年1月に移住し、2026年5月時点で1年4ヶ月が経過。実支出と当初試算の差を3つ挙げる。

想定外①:灯油代が事前試算の1.5倍だった

松本の冬は想像以上に厳しく、12〜2月の灯油代が月2.4万円(事前試算は1.5万円)。3ヶ月分で約3万円のオーバー

対策:暖房費比較シミュレーターで灯油 vs エアコン暖房 vs ペレットストーブを試算。来冬から夜間はエアコン、朝晩のみ灯油という併用に切り替え予定。

想定外②:絵里さんの収入はむしろ増えた

懸念していた絵里さんのフリーランス収入は、移住後1年で年換算240万円に。理由は (1) 通勤時間ゼロで稼働時間が増えた、(2) 地元の中小企業からWebサイト制作の新規受注が3件、(3) オンラインミーティング前提のクライアントは「東京にいるか松本にいるか」を気にしなかった——の3点。

楽観シナリオを上回る結果となった。

想定外③:教育費は減らなかった

「地方は教育費が安い」と聞いていたが、佐野家の場合は習い事(スイミング・公文)を東京と同じグレードで継続したため、教育費は月22,000円→月25,000円とむしろ微増。さらに長男が公立中学受験を意識しはじめており、来春から学習塾を追加すると月+15,000円の見込み。

「都会のサービスを地方で『同じレベルで』使おうとすると、選択肢が少ない分かえって割高になる」というのが拓也さんの実感だった。

教育費シミュレーターで公立進学・私立進学の累計コストを再計算し、学習塾の月額を1万円までに収めるよう調整中。

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1年4ヶ月の家計実績まとめ

項目当初試算(中立)実績(年換算)
世帯手取り640万円710万円+70万円
年間支出474万円488万円+14万円
年間貯蓄余力166万円222万円+56万円

絵里さんの収入が当初想定を上回ったことで、貯蓄余力は試算の1.34倍に拡大。佐野家はこの余剰分を全額NISAでつみたてに回し、新NISAシミュレーターで20年運用した場合の試算では、追加で1,500万円超の資産形成が見込めるという結果になった。

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移住を検討している家庭への佐野家からの提言

最後に、佐野家が「移住前に知っておけばよかった」と話す5つのポイント。

  1. 車のコストは"台数"だけでなく"運転時間"も増える
  1. 冬の暖房費は地域差を侮らない
  1. 「地方は安い」は半分しか正しくない
  1. 教育費は親の選択次第で都市部とほぼ同じになる
  1. フリーランスの収入は意外と落ちない

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関連シミュレーター

よくある質問(FAQ)

Q. この計算の前提データはどこから?

A. 住居費・物件価格は2026年5月時点の長野県松本市SUUMO・LIFULL HOME'Sの中古戸建て成約事例から平均値を採用。社会保険料は協会けんぽ長野支部(2026年度料率9.81%)・厚生年金18.3%。車関連は日本自動車工業会「自動車保有実態調査」と総務省統計局「家計調査・地方都市の交通費」(2024年)。暖房費は資源エネルギー庁「家庭部門のエネルギー消費実態調査」(令和5年度)に基づきます。

Q. 拓也さんの会社は地方移住で給与が下がらなかった?

A. 佐野家のケースでは「フルリモート前提のジョブグレード」で採用されており、勤務地手当(東京勤務手当2万円/月)が削減された以外は基本給は変わりませんでした。会社によっては地方移住で地域別給与体系に切り替わり10〜15%の減額があるケースもあります。事前に人事に確認を。

Q. 中古戸建てを買うリスクは?

A. 築17年だと住宅ローン控除(築年数要件は新耐震基準1981年6月以降)の対象ですが、設備の更新時期と重なります。佐野家も移住2年目に給湯器交換(35万円)が発生する見込み。中古購入時はインスペクション(建物状況調査)を必ず受け、初年度〜3年目の修繕費を100万円程度別途見積もることを推奨します。

Q. 数字が実感と合わない場合は?

A. 移住先の地域(豪雪地帯か中央高地か)、世帯人数、子どもの学年(中学受験有無)、車の保有台数で家計は大きく変わります。地方移住収支シミュレーターで自分の家族構成・年収・希望地を入れて再試算するか、お問い合わせフォームから具体的な数字を送ってもらえれば、佐野家のExcelテンプレートをベースに比較できます。

Q. ふるさと納税や住宅ローン控除は活用している?

A. 拓也さんは年収650万円・配偶者所得あり(特別控除対象外)・子2人で、ふるさと納税上限は約8万円。住宅ローン控除は中古住宅(築17年・新耐震適合)で年末残高×0.7%・最大10年で総額約100万円の還付見込み。両者を活用すれば年間約8万円の追加節税。詳細はふるさと納税限度額住宅ローン控除シミュレーターで試算できます。

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