後期高齢者医療制度とは|75歳からの保険料はいくら?計算式・軽減措置・窓口負担1〜3割の判定を検算式で解説
75歳になると全員が自動加入する後期高齢者医療制度の仕組みを解説。保険料は均等割+所得割で令和8・9年度の全国平均が月7,989円(子ども・子育て支援金分を足すと8,183円)、東京都で年金収入200万円の単身者なら年約9.1万円。7割・5割・2割の均等割軽減、元被扶養者の特例、窓口負担1割・2割・3割の判定フロー、高額療養費の上限まで、計算式と検算例つきで整理する。
月7,989円。厚生労働省が公表した、後期高齢者医療制度の1人あたり保険料(医療分)の全国平均見込み(令和8・9年度)だ。令和6・7年度の7,411円から578円(7.8%)上がった。2026年度からは子ども・子育て支援金分(全国平均月194円)も上乗せされ、合計は月8,183円、年額では約9.8万円になる。
75歳の誕生日を迎えると、それまで国民健康保険に入っていた人も、子どもの健康保険の被扶養者として保険料ゼロだった人も、例外なく全員がこの制度に移る。手続きは不要で、ある日から保険証(資格確認書・マイナ保険証)が変わり、保険料の通知が届く。団塊の世代が2025年までに全員75歳以上となり、加入者は約2,000万人規模。「親の保険料が急に発生した」「窓口負担が2割になった」といった戸惑いの多くは、この制度の仕組みを知らないことから来ている。
本記事では、保険料の計算式、軽減措置、窓口負担の判定、高額療養費までを検算式つきで整理する。
制度の基本骨格:75歳で全員が「個人単位」の保険に移る
後期高齢者医療制度は2008年に始まった、75歳以上(および65〜74歳で一定の障害認定を受けた人)を対象とする独立した医療保険だ。運営は都道府県ごとの「後期高齢者医療広域連合」が担う。それまでの保険と決定的に違う点は3つある。
- 世帯単位ではなく個人単位。夫婦それぞれに保険料がかかる
- 被扶養者という概念がない。会社員の子に扶養されていた親も、75歳からは自分名義の保険料を払う(後述の軽減あり)
- 財源の約4割は現役世代の支援金、約5割は公費。加入者の保険料は約1割で、現役の健康保険料に含まれる「後期高齢者支援金」がこの制度を支えている。給与明細の健康保険料が年々重くなる構造的な理由のひとつだ
保険料の計算式:均等割+所得割
保険料は都道府県ごとに料率が異なるが、式は全国共通だ。
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年間保険料 = 医療分(均等割額+所得割額)+ 子ども・子育て支援金分(均等割額+所得割額)
所得割額 =(前年の総所得金額等 − 基礎控除43万円)× 所得割率
賦課上限 = 医療分 年85万円 + 子ども・子育て支援金分 年2.1万円(令和8年度〜)
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料率の例として東京都の令和8・9年度を挙げると、医療分が均等割53,300円・所得割率9.88%、子ども・子育て支援金分が均等割1,300円・所得割率0.26%。令和6・7年度(均等割47,300円・所得割率9.67%)から均等割は6,000円上がった。料率は都道府県ごとに2年ごとに改定されるため、正確な額は必ず各広域連合のサイトか届いた通知で確認してほしい。以下の検算はこの東京都料率を「仕組みの例」として使う。
検算例:年金収入200万円・単身の場合
年金収入は「公的年金等控除」を引いてから所得になる。65歳以上は最低110万円が引ける。
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年金所得 = 200万円 − 110万円 = 90万円
所得割 =(90万円 − 43万円)×(9.88% + 0.26%)= 46,436円 + 1,222円 = 47,658円
均等割 =(53,300円 + 1,300円)× 0.8 = 43,680円(後述の2割軽減が該当)
年間保険料 ≒ 91,338円(月約7,600円。実際の通知額は端数処理で数十円ずれる)
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自分や親の年金額が分からなければ、年金受給額シミュレーターで現役時代の収入から概算できる。
均等割の軽減:7割・5割・2割
所得の低い世帯には均等割の軽減がある。判定は世帯主と被保険者全員の合計所得で行い、65歳以上の人の年金所得はさらに15万円(高齢者特別控除)を引いた額で判定する。単身者の場合の目安はこうなる(令和8年度の基準)。
| 軽減割合 | 判定所得の基準(単身の場合) | 年金収入の目安 | 東京都例の均等割(医療分+子ども分) |
|---|---|---|---|
| 7割軽減(医療分は7.2割) | 43万円以下 | 168万円以下 | 15,314円 |
| 5割軽減 | 43万円+31万円以下(74万円) | 199万円以下 | 27,300円 |
| 2割軽減 | 43万円+57万円以下(100万円) | 225万円以下 | 43,680円 |
| 軽減なし | 100万円超 | 225万円超 | 54,600円 |
年金収入の目安は「年金収入 − 公的年金等控除110万円 − 特別控除15万円 ≦ 基準額」から逆算したもの。令和8・9年度は、7割軽減の世帯の医療分の均等割が7.2割軽減に拡充されている。
先ほどの検算例(年金所得90万円)は、判定所得が90万円 − 15万円 = 75万円。5割軽減の74万円をわずか1万円超え、100万円以下なので2割軽減に該当する、という順序で読む。年金収入が199万円なら5割軽減となり、均等割は43,680円→27,300円と1.6万円下がる。年金が国民年金のみ(令和8年度の満額で年847,300円・月70,608円)なら所得は0円で7割軽減となり、保険料は年15,314円・月1,300円程度に収まる。
元被扶養者の特例
75歳になる前日まで健康保険の被扶養者だった人は、所得割がかからず、均等割も加入後2年間は5割軽減される。東京都例なら年27,300円・月約2,300円。「扶養に入れていた親の保険料がゼロから月2,300円になった」というのは、この特例が正しく適用された状態だ。
なお支払いは原則、年金からの天引き(特別徴収。年金が年18万円以上の場合)で、申請すれば口座振替に変更できる。口座振替にして子が払えば、その保険料は子の社会保険料控除にできるという税務上の選択肢もある。
窓口負担は1割・2割・3割——判定フロー
保険料と並ぶもうひとつの柱が、病院での自己負担割合だ。2022年10月に「2割」区分が新設され、現在は3段階になっている。上から順に判定する。
- 同じ世帯の後期高齢者に住民税の課税所得145万円以上の人がいる → 3割(現役並み所得。ただし世帯収入が基準未満なら申請により1〜2割に戻る)
- 課税所得28万円以上 かつ 「年金収入+その他の合計所得」が単身200万円以上(後期高齢者が2人以上の世帯は合計320万円以上) → 2割
- 上記以外 → 1割
2割負担の対象は後期高齢者全体の約2割とされる。導入時に設けられていた外来の負担増を月3,000円までに抑える配慮措置は、2025年9月30日で終了した。2025年10月以降、2割対象者の外来負担は文字どおり1割時代の2倍になっており、「最近急に医療費が増えた」と感じる場合はまずこの区分変更を疑うとよい。年間の医療費全体を把握するには医療費 年間まとめシミュレーターが使える。
高額療養費:負担割合が何割でも、月の上限は決まっている
窓口負担が2割・3割になっても、1ヶ月の自己負担には上限がある(高額療養費制度)。2026年8月(令和8年8月)の改定で70歳以上の上限も引き上げられた。改定後の主な区分は次のとおり。
| 所得区分 | 外来(個人ごと) | 外来+入院(世帯) |
|---|---|---|
| 現役並み(課税所得145万円以上) | 85,800円+(医療費−286,000円)×1%〜 | 同左(所得によりさらに高い区分あり) |
| 一般(1〜2割負担の多く) | 22,000円(改定前18,000円) | 61,500円(4回目以降44,400円) |
| 住民税非課税世帯 | 11,000円(改定前8,000円) | 15,000〜24,600円(据え置き) |
※ 外来には月額上限とは別に年間の合算上限(改定前144,000円)もある。改定後の年間上限額は政令ベースで確定に幅があるため、最新は広域連合・厚労省の公表資料で確認してほしい。多数回該当(44,400円)と住民税非課税世帯の入院含む上限は低所得者への配慮で据え置かれた
たとえば2割負担の人が外来で月15万円分の医療を受けても、窓口負担は計算上の30,000円ではなく上限22,000円で止まる。一方、毎月外来にかかる人にとっては月18,000円→22,000円の引き上げは年間最大4.8万円程度の負担増になりうる。入院を含む世帯合算の上限や多数回該当の効き方は高額療養費シミュレーターで年収別に確認できる。入院1回あたりの実際の持ち出し(差額ベッド代・食事代は上限の対象外)は入院費用シミュレーターが目安になる。
よくある質問
Q. この計算の前提データはどこから?
制度の枠組みと全国平均保険料は厚生労働省「後期高齢者医療制度について」および同省「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」、料率例は東京都後期高齢者医療広域連合の令和8・9年度の公表値(東京都保健医療局・文京区の案内で照合)、軽減基準は地方税法・高齢者医療確保法の政令基準、高額療養費の上限額は2026年8月(令和8年8月)改定後の値による。保険料率は2年ごと、軽減基準額は毎年度見直されるため、最新値は必ず居住地の広域連合・市区町村の通知で確認してほしい。
Q. 74歳まで国保だった場合、保険料は上がる?下がる?
所得が同じなら大きくは変わらないことが多い。国保の保険料も均等割+所得割の構造で、後期高齢者医療には国保にある「平等割(世帯割)」がない分、単身ではやや下がるケースもある。一方、健保の被扶養者だった人は「ゼロ→有料」になるので必ず負担増になる。
Q. 夫婦の一方だけが75歳になったら?
75歳になった側だけが後期高齢者医療に移り、残った側は国保等に入り直す。夫の健保の被扶養者だった74歳以下の妻は、夫が75歳になった時点で被扶養者資格を失い、自分で国保に加入して保険料を払う必要がある。ここは見落としが多く、手続きが遅れると無保険期間が生じる。
Q. 数字が実感と合わない場合は?
本記事の料率は東京都の令和8・9年度例で、均等割・所得割率は都道府県ごとに異なる。東京都は所得金額15万円以下で所得割を50%、20万円以下で25%軽減する独自措置もある。また遺族年金・障害年金は非課税で所得に含まれない。届いた保険料額決定通知書の内訳と本記事の式を突き合わせても合わない場合は、お問い合わせフォームから通知書の記載項目を添えて連絡してほしい。
75歳を迎える親がいる人が確認しておく3点
親の医療費は、介護費用と並んで老後の家計の主変数だ。老後の生活費シミュレーターや老人ホーム費用シミュレーターで全体像を掴む前に、まず次の3点を親の通知書で押さえておくと、以降の試算の精度が一段上がる。
- 保険料の軽減区分(7割・5割・2割のどれか、元被扶養者特例が効いているか)
- 窓口負担割合(1・2・3割のどれか。2025年10月の配慮措置終了で外来負担が変わっていないか)
- 高額療養費の所得区分(限度額を超えた月の払い戻し・限度額適用認定の要否)
保険料も負担割合も「前年の所得」で毎年8月前後に更新される。親の働き方や年金の受け取り方が変わった翌年は、この3点を見直すタイミングでもある。