退職金の手取りはいくら?税金の計算方法と勤続年数別の早見表【2026年・10年ルール対応】
勤続30年・退職金2,000万円なら税金は約41万円、手取り約1,959万円。退職所得控除の計算表、勤続年数×退職金額の手取り早見表、勤続5年以下の短期退職ルール、iDeCo一時金との「10年ルール」(2026年1月〜)まで、国税庁の現行法令をもとに解説します。
結論: 勤続30年・2,000万円なら手取り約1,959万円
退職金には退職所得控除という大きな非課税枠があり、控除を超えた分もさらに1/2にしてから課税されます。結果として、勤続30年・退職金2,000万円なら税金は所得税15.25万円+復興特別所得税約0.3万円+住民税25万円=約40.6万円、手取りは約1,959万円(実効税率2.0%)です。
| 勤続年数 | 退職金 | 退職所得控除 | 課税対象 | 税金合計 | 手取り |
|---|---|---|---|---|---|
| 20年 | 1,000万円 | 800万円 | 100万円 | 約15.1万円 | 約985万円 |
| 25年 | 1,500万円 | 1,150万円 | 175万円 | 約26.4万円 | 約1,474万円 |
| 30年 | 2,000万円 | 1,500万円 | 250万円 | 約40.6万円 | 約1,959万円 |
| 38年 | 2,000万円 | 2,060万円 | 0円 | 0円 | 2,000万円 |
同じ2,000万円を給与として受け取ると、年収から手取り計算シミュレーターで分かるとおり税金と社会保険料で数百万円が引かれます。退職金の優遇がいかに大きいかが分かります。自分の条件で試すなら退職金手取りシミュレーターに退職金額と勤続年数を入れるだけです。
退職所得控除額の計算表
控除額は勤続年数だけで決まります(所得税法30条、国税庁タックスアンサーNo.1420)。
| 勤続年数 | 計算式 | 控除額 |
|---|---|---|
| 2年以下 | 下限 | 80万円 |
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数 | 10年→400万円、15年→600万円、20年→800万円 |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) | 25年→1,150万円、30年→1,500万円、35年→1,850万円、38年→2,060万円 |
| 障害退職 | 上記 + 100万円 | 障害者になったことに直接起因して退職した場合 |
勤続年数に1年未満の端数があれば切り上げです。19年6ヶ月なら20年として800万円。19年扱い(760万円)と比べると、退職金1,500万円のケースで税額が約6万円変わります。20年超なら1年で控除が70万円増えるため、退職日を数日ずらす価値がある人もいます。退職日の決め方は退職時期シミュレーターで社会保険料や住民税と合わせて確認できます。
税金の計算は4ステップ
- 退職所得控除額を勤続年数から求める
- 課税退職所得 =(退職金 − 控除額)× 1/2(1,000円未満切捨て)
- 所得税 = 課税退職所得 × 税率 − 速算控除(5〜45%の累進)に復興特別所得税2.1%を上乗せ
- 住民税 = 課税退職所得 × 10%
退職所得は他の所得と合算しない分離課税で、社会保険料もかかりません。「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出しておけば、会社が正しい税額を天引きして手続きは完了します。制度の背景まで知りたい方は退職所得控除と1/2課税の仕組み解説をどうぞ。
具体例: 勤続25年・退職金1,500万円
控除額は800万円 + 70万円 × 5年 = 1,150万円。課税退職所得は(1,500万円 − 1,150万円) × 1/2 = 175万円で、所得税87,500円+復興特別所得税1,837円+住民税175,000円 = 税金264,337円、手取り14,735,663円(実効税率1.8%)です。
勤続年数 × 退職金額の手取り早見表
シミュレーターと同じ計算式で算出した手取り額です(一般従業員・申告書提出・障害退職加算なし。万円未満四捨五入)。
| 退職金 \ 勤続 | 10年(控除400万円) | 20年(800万円) | 25年(1,150万円) | 30年(1,500万円) | 35年(1,850万円) | 38年(2,060万円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 492万円 | 500万円 | 500万円 | 500万円 | 500万円 | 500万円 |
| 1,000万円 | 949万円 | 985万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 1,500万円 | 1,376万円 | 1,437万円 | 1,474万円 | 1,500万円 | 1,500万円 | 1,500万円 |
| 2,000万円 | 1,797万円 | 1,861万円 | 1,914万円 | 1,959万円 | 1,989万円 | 2,000万円 |
| 2,500万円 | 2,198万円 | 2,280万円 | 2,338万円 | 2,392万円 | 2,444万円 | 2,465万円 |
| 3,000万円 | 2,589万円 | 2,676万円 | 2,753万円 | 2,814万円 | 2,869万円 | 2,901万円 |
控除額以下なら税金ゼロ(勤続30年なら1,500万円まで、38年なら2,060万円まで)、控除を大きく超える勤続20年・3,000万円でも税金は約324万円(実効税率10.8%)に収まります。
勤続5年以下は「短期退職手当等」で計算が変わる
令和4年分から、役員等以外でも勤続5年以下の退職金は「短期退職手当等」となり、控除後の金額のうち300万円を超える部分に1/2課税が適用されません。
- 勤続5年・退職金1,000万円: 控除200万円を引いた800万円のうち、300万円は1/2の150万円、残り500万円は全額課税 → 課税退職所得650万円、税金約154万円(手取り約846万円)
- 全額1/2が使えた場合の税金は約78万円なので、約76万円の差
役員等として勤続5年以下の「特定役員退職手当等」は300万円の枠すらなく、控除後の全額に課税されます。転職を重ねて数年で会社を移る人や、スタートアップの役員は要注意です。
一時金と年金、どちらで受け取るべきか
| 一時金 | 年金(分割) | |
|---|---|---|
| 税制 | 退職所得控除 + 1/2課税(分離課税) | 雑所得。公的年金等控除を公的年金と分け合う |
| 社会保険 | 影響なし | 国民健康保険料・介護保険料の算定所得に含まれる |
| 運用 | 自分で運用 | 会社が年1〜2%程度で運用してくれる制度が多い |
| 向く人 | 退職金が控除枠に収まる人 | 控除を大きく超える部分がある人(併用) |
税金だけなら一時金が有利なことが多いものの、控除枠を超える部分を年金にする「併用」が総額で勝つケースもあります。パターン別の税引後総額は退職金は一時金・年金・併用どれが得?で比較しているので、ここでは繰り返しません。
iDeCo・企業型DCの一時金と控除枠を分け合う「10年ルール」
iDeCoや企業型DCを一時金で受け取ると退職所得になり、会社の退職金と同じ退職所得控除の枠を使います。近い年に受け取ると、重なっている加入期間・勤続期間の分だけ控除が調整されます。
| 受け取る順番 | 調整の対象になる期間 | 満額の控除を使うには |
|---|---|---|
| 退職金 → 後からiDeCo一時金 | 前年以前19年内の退職金 | 20年以上空ける |
| iDeCo一時金 → 後から退職金 | 前年以前9年内のiDeCo一時金 | 10年以上空ける |
| 同じ年に両方 | 合算して1つの控除枠 | 重複しない期間を通算した年数で控除を計算 |
「iDeCo → 退職金」の順は、令和7年度税制改正で「4年内」から「9年内」に延長され、2026年1月1日以後に受け取る退職金から適用されています(いわゆる5年ルール→10年ルール)。「60歳でiDeCo一時金、65歳で退職金」という定番の順番は、退職金側の控除が圧縮されるようになりました。対策は3つです。
- 退職金が控除枠に収まる人: iDeCoも同じ年に一時金で受け取り、余った枠を使う
- 退職金が控除枠を大きく超える人: iDeCoは年金形式(公的年金等控除)で受け取る、または退職金の20年後まで受取を遅らせる
- 退職が早い人(50代前半): iDeCoは75歳まで受取を繰り下げられるので、退職金から20年空ける選択肢がある
節税額の試算はiDeCoシミュレーター、改正の全体像はiDeCo 2027年改正の解説を参照してください。
ペルソナ別: 手取りはこう変わる
A. 大企業を定年退職(勤続38年・退職金1,896万円)
厚労省調査の大卒定年退職者の平均額(1,896万円)を、22歳入社・60歳定年の勤続38年で受け取るケース。控除2,060万円に収まるため税金ゼロ、手取り1,896万円です。税金より定年後の取り崩しの設計が本題になる層です。
B. 52歳で早期優遇退職(勤続30年・割増込み3,000万円)
控除1,500万円を引いた1,500万円の半分、750万円が課税対象。所得税108.9万円+復興特別所得税2.3万円+住民税75万円で税金約186万円、手取り約2,814万円(実効税率6.2%)です。割増分が大きくても税率は1桁です。再就職までの家計を含めた検討は早期退職パッケージのケーススタディで扱っています。
C. 転職前提のキャリア(勤続5年・退職金1,000万円)
短期退職手当等の対象で、税金約154万円、手取り約846万円(実効税率15.4%)。同じ1,000万円を勤続6年で受け取れば控除240万円で全額1/2となり税金約72万円ですから、勤続年数が5年か6年かで80万円以上の差が出ます。役員なら差はさらに広がります。
退職金の平均額(一次データ)
| 区分 | 定年退職者1人平均 | 出典 |
|---|---|---|
| 大学・大学院卒(管理・事務・技術職) | 1,896万円 | 厚労省「令和5年就労条件総合調査」 |
| 高校卒(管理・事務・技術職) | 1,682万円 | 同上 |
| 高校卒(現業職) | 1,183万円 | 同上 |
| 大卒・勤続20〜24年 / 25〜29年 / 30〜34年 / 35年以上 | 1,021 / 1,559 / 1,891 / 2,037万円 | 同上・第23表 |
| 都内中小企業(10〜299人)大学卒モデル | 1,149.5万円 | 東京都「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」 |
大卒の定年退職金は平成30年調査の1,983万円から令和5年調査の1,896万円へ87万円減っています。退職給付の調査は5年ごとで令和5年が最新、都内中小企業のモデル退職金は令和6年版が最新です(2026年9月時点)。業種・勤続年数から自分の額面を推定するなら退職金相場シミュレーターが使えます。
よくある質問
「退職所得の受給に関する申告書」を出さないとどうなる?
支給額の一律20.42%(所得税+復興特別所得税)が源泉徴収されます。退職金1,500万円なら約306万円。本来の税額(勤続25年なら約26万円)との差額は確定申告で還付されますが、数ヶ月は手元に戻りません。退職前に必ず提出してください。
確定申告は必要?
申告書を提出していれば原則不要です。必要・有利になるのは、申告書を出していない、同じ年に2か所以上から退職金を受け取った、退職年の給与について年末調整を受けておらず医療費控除などを使いたい、といった場合です。
退職金に社会保険料はかかる?
かかりません。健康保険・厚生年金・雇用保険のいずれも退職金は対象外で、引かれるのは所得税・復興特別所得税・住民税だけです。翌年度の国民健康保険料の算定にも、分離課税された退職所得は原則含まれません。なお在職中の給与に対する住民税は退職翌年の6月以降に請求されるので、住民税シミュレーターで金額を確認し退職金から取り分けておきましょう。
転職した場合の勤続年数は通算される?
退職所得控除の勤続年数は、その退職金を支給する会社での勤続期間です。前職の年数は通算されません。ただし企業型DCを転職先に移換した場合は加入期間が通算されます。
死亡退職金の扱いは?
在職中に亡くなった場合の死亡退職金は所得税ではなく相続税の対象(みなし相続財産)で、「500万円 × 法定相続人の数」が非課税です。相続税シミュレーターで試算できます。
この記事の数字の出典は?
計算式は所得税法30条・国税庁タックスアンサーNo.1420、短期退職手当等と20.42%源泉徴収はNo.2732、税率はNo.2260の速算表によります。退職金の平均額は厚労省「令和5年就労条件総合調査」第22・23表と東京都「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」第8表です。2026年9月時点で国税庁サイトの現行法令と照合しています。
数字が実感と合わない場合は?
会社の勤続年数の数え方(休職・出向・転籍の扱い)、退職金の一部が確定給付企業年金として年金払いになっている、前年以前19年内(iDeCo先行なら9年内)に別の退職一時金を受け取っている、申告書未提出で20.42%が引かれている、のいずれかであることがほとんどです。それでも源泉徴収票と大きくずれる場合は、お問い合わせページからご連絡ください。
関連シミュレーター・記事
- 退職金 手取り計算シミュレーター — 退職金額と勤続年数から控除・税額・手取りを即計算(短期退職・役員にも対応)
- 退職金は一時金・年金・併用どれが得? — 受取方法別の税引後総額を比較
- 退職所得控除と1/2課税の仕組み解説 — 分離課税・控除・1/2の制度構造
- 早期退職パッケージ 52歳のケーススタディ — 割増退職金の手取りと再就職までの家計
- 退職時期シミュレーター — 何月末に辞めると社会保険料・住民税・ボーナスで有利か
- 老後資金シミュレーター — 退職金の手取りを入れて老後の不足額を逆算