傷病手当金はいくらもらえる?計算方法・待期3日・支給期間を徹底解説
病気やケガで仕事を休んだときに受け取れる傷病手当金の計算方法を解説。標準報酬日額の2/3、待期3日のルール、最長1年6か月の支給期間まで具体例で紹介します。
病気で仕事を休んだとき、収入はどうなる?
突然の病気やケガで長期間働けなくなったとき、会社員・公務員を守るのが「傷病手当金」です。健康保険(社会保険)に加入していれば、健康保険法第99条に基づき、給与(標準報酬日額)の約3分の2を最長1年6か月(通算548日)受け取れます。
協会けんぽの2023年度の支給件数は約75万件、平均受給日数は約180日、平均支給額は約9万円/月(協会けんぽ「現金給付受給者状況調査」)。うつ病・がん・心疾患・脳血管疾患などで長期休業に至るケースが増えており、平均寿命の延伸とともに「働き盛り世代の中長期離職リスク」への備えとして傷病手当金の重要性は年々高まっています。
ただし計算方法が少し複雑で、「実際いくらもらえるのか」「申請のタイミングはいつか」を正確に把握している人は少ないのが現状です。本記事では計算式・支給条件・申請手続き・退職後の継続受給ルールまで、具体的な数字で解説します。
傷病手当金の4つの支給条件
- 業務外の病気・ケガであること(労災は対象外)
- 療養のために働けない状態であること
- 連続する3日間の待期期間が完成していること
- 給与の支払いがないこと(または一部だけの支払い)
待期3日のルール
傷病手当金が支給されるのは、連続して4日以上休んだ場合の4日目からです。最初の3日間(待期期間)は支給されません。
| 日数 | 状態 | 手当金 |
|---|---|---|
| 1日目 | 欠勤(待期1日目) | なし |
| 2日目 | 欠勤(待期2日目) | なし |
| 3日目 | 欠勤(待期3日目) | なし |
| 4日目〜 | 欠勤 | 支給開始 |
待期3日は連続していることが条件です。土日祝日も含まれます。有給休暇を使っても待期期間にカウントされます(ただし有給中は給与が出るため、その日の手当金は支給されません)。
支給額の計算方法
計算式
傷病手当金(1日あたり)= 標準報酬日額 × 2/3
標準報酬日額 = 支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30
具体的な計算例
月給30万円(標準報酬月額30万円)の方が2か月間休業した場合:
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 標準報酬月額 | 30万円 | 300,000円 |
| 標準報酬日額 | 300,000円 ÷ 30 | 10,000円 |
| 1日あたりの手当金 | 10,000円 × 2/3 | 6,667円 |
| 月あたりの支給額(30日) | 6,667円 × 30日 | 200,010円 |
| 2か月合計 | 約400,000円 |
給与の約67%が保障されます。
月収別の傷病手当金早見表
| 月収(標準報酬月額) | 日額 | 月額(30日換算) | 年額換算 |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 4,444円 | 133,320円 | 1,599,840円 |
| 25万円 | 5,556円 | 166,680円 | 2,000,160円 |
| 30万円 | 6,667円 | 200,010円 | 2,400,120円 |
| 35万円 | 7,778円 | 233,340円 | 2,800,080円 |
| 40万円 | 8,889円 | 266,670円 | 3,200,040円 |
| 50万円 | 11,111円 | 333,330円 | 3,999,960円 |
支給期間:最長1年6か月
傷病手当金は支給開始日から通算して1年6か月が限度です。
| 経過期間 | 状態 |
|---|---|
| 〜1年6か月 | 支給対象 |
| 1年6か月超 | 支給終了 |
2022年の法改正で「通算1年6か月」に変更されました。以前は支給開始から暦上1年6か月でしたが、現在は実際に支給を受けた日数の合計が1年6か月(548日)まで受け取れます。途中で復職して再び休業した場合も、残りの日数分は受給できます。
給与との調整
休業中に給与(有給休暇含む)が支払われた場合、以下のように調整されます。
| 状況 | 傷病手当金 |
|---|---|
| 給与なし | 全額支給 |
| 給与 < 傷病手当金 | 差額を支給 |
| 給与 ≧ 傷病手当金 | 支給なし |
有給休暇を使いながら受診する場合、その日は給与が出るため手当金は支給されませんが、待期期間のカウントには含まれます。
退職後も受け取れる?
以下の条件を満たせば、退職後も引き続き受給できます。
- 資格喪失(退職)前に傷病手当金を受けていた
- 継続して1年以上の被保険者期間がある
- 退職日に出勤していない
退職後は任意継続被保険者になる必要はありません。ただし、退職後に傷病手当金の申請をする場合は、タイミングに注意が必要です。
傷病手当金が使えないケース
- 自営業・フリーランス(国民健康保険には傷病手当金制度なし)
- 労災(業務上の病気・ケガ)に該当する場合
- 出産手当金と重複して受給する期間
- 老齢年金と重複する場合(年金額が少ないときは差額支給)
申請の流れ
- 主治医に「労務不能」の証明を記入してもらう(診断書代1,000〜3,000円が必要)
- 事業主に勤怠・給与の証明を記入してもらう
- 健康保険組合(協会けんぽ等)に申請書を提出
- 審査後、指定口座に振込(通常2〜4週間)
申請は1か月ごとでも、まとめて申請することも可能です。
申請でつまずきやすい3つの落とし穴
| 落とし穴 | 対策 |
|---|---|
| 待期3日の途中で「軽い仕事をした」と判断される | 完全に労務不能であることを医師に明確に書いてもらう |
| 給与と相殺されて支給ゼロになる | 有給休暇を使い切ってから傷病手当金に切り替える |
| 退職後に申請するタイミングを逃す | 退職前に1回でも支給を受けておく(資格喪失後の継続給付の要件) |
ケース別シミュレーション例
ケース1:30代会社員(月収30万円)がうつ病で6か月休業
- 標準報酬日額:10,000円
- 1日あたり手当金:6,667円
- 待期3日を除いた支給日数:約177日
- 総受給額:約118万円
社会保険料は免除されないため、傷病手当金から月約4〜5万円の健康保険・厚生年金保険料が引かれることに注意。手取りは月約15〜16万円。
ケース2:40代管理職(月収50万円)が脳梗塞で1年6か月休業(最長)
- 標準報酬日額:16,667円
- 1日あたり手当金:11,111円
- 支給日数:548日(通算1年6か月)
- 総受給額:約609万円
ただし通算548日を超えると打ち切り。長期化が見込まれる場合は、障害年金(障害認定後)への切り替えを検討する必要があります。
ケース3:20代女性(月収22万円)が出産前後で受給切り替え
- 出産予定日42日前〜出産後56日:出産手当金が優先(傷病手当金と重複不可)
- 出産手当金後にも体調不良で休業継続:傷病手当金へ切り替え可能
- それぞれの計算式は同じ(標準報酬日額の2/3)ですが、申請窓口・必要書類が異なります
自営業・フリーランスの備え方
国民健康保険には傷病手当金制度がないため、自営業・フリーランスは公的な所得保障を受けられません。代替策として以下の方法があります。
| 備え方 | 月額目安 | 給付内容 |
|---|---|---|
| 民間の所得補償保険 | 2,000〜5,000円 | 月10〜30万円を最長5年程度 |
| 就業不能保険 | 3,000〜8,000円 | 月10〜50万円を65歳まで |
| 小規模企業共済 | 1,000〜70,000円 | 廃業時に積立金を受給(病気では不可) |
| 預貯金(6か月分の生活費) | — | 自己資金で生活費を賄う |
民間の所得補償保険は会社員でも傷病手当金の不足分(給与の1/3)を補う目的で加入する人が増えています。
よくある質問(FAQ)
傷病手当金の総額の上限はいくらですか?
通算1年6か月(548日)が支給期間の上限です。月収50万円の方の最大受給額は約609万円、月収30万円の方の最大受給額は約365万円となります。1年6か月を超えても回復しない場合は、障害年金への切り替えを検討してください。
副業をしていた場合、副業収入は影響しますか?
副業(本業の会社とは別の事業所からの収入)がある場合、副業先で「労務不能」と判断されると傷病手当金の支給対象外になります。在宅でできる軽作業程度なら問題ないケースもありますが、申請前に健康保険組合へ確認しましょう。
数字が実感と合わない場合は?
標準報酬月額は過去12か月の平均で決まるため、昇給や残業代の変動により実際の金額と異なることがあります。シミュレーターで概算した上で、正確な金額は加入している健保組合にお問い合わせください。
出典・データはどこから?
健康保険法に基づく傷病手当金の計算式(標準報酬日額の2/3)、協会けんぽの等級表(2025年度)、協会けんぽ「現金給付受給者状況調査」(2023年度)を参考にしています。
関連シミュレーター
傷病手当金以外にも、万が一の備えや社会保険に関するシミュレーターを活用してみてください。
- 失業手当シミュレーター — 退職後の失業給付金の目安を計算
- 高額療養費シミュレーター — 医療費が高額になった場合の自己負担限度額
- 医療費控除シミュレーター — 確定申告での医療費控除の還付額を確認
- 生命保険 見直しシミュレーター — 保険の過不足をチェック
- 年金受給額シミュレーター — 将来の年金受給額を試算
- 手取り計算シミュレーター — 月収から税・社会保険を引いた手取りを試算
あなたの傷病手当金をシミュレーション
月収・休業日数・給与の支払い状況を入力すると、実際に受け取れる傷病手当金の総額を計算できます。万が一の備えとして、傷病手当金シミュレーターで金額を確認しておきましょう。