青色申告で年14〜29万円の節税|令和8年分の白色申告との差額を売上別に比較
令和8年分は基礎控除104万円の新ルールで、青色申告65万円控除の節税額が売上900万円前後で年約29万円に跳ね上がります。売上300〜1,500万円の早見表、令和9年分からの75万円控除・書面10万円への改正、専従者給与・少額減価償却40万円未満まで実際の計算で解説。
結論:令和8年分は「青色65万円控除」が年14〜29万円の差になる
個人事業主の確定申告には「青色申告」と「白色申告」があります。2014年からは白色申告にも記帳と帳簿保存の義務があるため、手間の差は昔ほど大きくありません。それでも節税効果は青色申告の方がずっと大きいのが実情です。
東京23区・単身・39歳以下・経費率40%で計算すると、令和8年分(2026年1〜12月の所得、2027年2〜3月に申告)で青色申告(65万円控除)を選んだ場合の節税額は年約14〜29万円です。売上500万円なら約15.7万円、売上900万円なら約28.8万円になります。
この記事は、2026年10月時点の制度で計算し直しています。主な変更点は、(1)令和8年度税制改正で基礎控除が最大104万円になったこと、(2)令和9年分から青色申告特別控除が最大75万円になること、(3)少額減価償却資産の上限が40万円未満に上がったことの3つです。
売上別の節税額早見表(令和8年分・経費率40%)
| 売上 | 白色の所得 | 青色の所得 | 白色の負担 | 青色の負担 | 節税額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 300万 | 180万 | 115万 | 54.1万 | 39.7万 | 14.4万 |
| 500万 | 300万 | 235万 | 83.5万 | 67.8万 | 15.7万 |
| 700万 | 420万 | 355万 | 121.1万 | 102.7万 | 18.4万 |
| 800万 | 480万 | 415万 | 141.3万 | 122.6万 | 18.6万 |
| 900万 | 540万 | 475万 | 171.6万 | 142.8万 | 28.8万 |
| 1,000万 | 600万 | 535万 | 197.3万 | 172.7万 | 24.5万 |
| 1,500万 | 900万 | 835万 | 326.0万 | 302.0万 | 23.9万 |
※ 負担 = 所得税(復興特別所得税2.1%込み)+住民税+国保(東京23区・令和8年度料率)+国民年金(月17,920円)+個人事業税(5%)。青色申告メリット比較シミュレーターの計算結果です。
売上900万円で節税額が跳ね上がる理由
令和8・9年分の所得税の基礎控除は、合計所得金額によって次のように変わります。
| 合計所得金額 | 基礎控除(所得税) |
|---|---|
| 489万円以下 | 104万円 |
| 489万円超〜655万円以下 | 67万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 62万円 |
売上900万円・経費360万円の場合、白色申告では所得が540万円なので基礎控除は67万円です。青色申告では65万円控除で所得が475万円に下がり、基礎控除が104万円に増えます。つまり青色申告にすると「65万円+37万円=102万円」の控除が増えることになり、所得税だけで約16万円下がります。
```
白色: 所得540万 − 基礎控除67万 − 社会保険料80.8万 = 課税所得392.2万 → 所得税36.4万円
青色: 所得475万 − 基礎控除104万 − 社会保険料73.9万 = 課税所得297.0万 → 所得税20.4万円
```
所得がおおむね489〜554万円の人は、青色申告にすると基礎控除の境目をまたぐため、節税額が大きく増えます。
青色申告特別控除の金額と条件:令和8年分と令和9年分以後
| 記帳・申告の方法 | 令和8年分 | 令和9年分以後 |
|---|---|---|
| 複式簿記+e-Tax+優良な電子帳簿 | 65万円 | 75万円 |
| 複式簿記+e-Tax | 65万円 | 65万円 |
| 複式簿記+書面で提出 | 55万円 | 10万円 |
| 簡易簿記(前々年の収入1,000万円以下) | 10万円 | 10万円 |
| 簡易簿記(前々年の収入1,000万円超) | 10万円 | 0円 |
令和8年度税制改正の大綱では、55万円控除にe-Taxでの提出を条件として加え、そのうえで控除額を65万円に引き上げることになりました。いまの65万円控除は「優良な電子帳簿」の保存を条件に75万円になります。その結果、書面で提出する人は55万円から10万円に下がります。売上500万円の例では、令和8年分の書面提出(55万円)なら節税額は13.2万円ですが、令和9年分も書面で提出すると2.4万円まで減ります。個人住民税にこの改正が反映されるのは令和10年度分からです。
どの方法を選ぶべきか(フローチャート)
```
帳簿は会計ソフトで付けている?
├─ いいえ → 簡易簿記(10万円)。収入1,000万円超は令和9年分から0円
└─ はい → e-Taxで申告できる?
├─ いいえ → 令和8年分は55万円、令和9年分からは10万円
└─ はい → 銀行・カード明細の自動連携や訂正削除履歴に対応した
優良電子帳簿のソフト?
├─ はい → 令和9年分から75万円(売上500万円なら節税18.1万円)
└─ いいえ → 65万円(同15.7万円)
```
65万円控除以外のメリット
専従者給与:白色の上限86万円との差
配偶者が事業を手伝っている場合、青色申告なら届け出た範囲の給与をすべて経費にできます。白色申告の事業専従者控除は、配偶者86万円と「控除前の所得÷2」の小さい方までです。
注意したいのは、その給与が配偶者の収入として課税されることです。売上800万円・経費200万円で配偶者に年180万円を払うと、配偶者側に所得税・住民税・国保所得割が年約11.1万円かかります。それを差し引いても世帯全体で年約21.3万円の節税になり、65万円控除の効果と合わせると約47.7万円です。年96万円程度の給与なら配偶者側の税金はほぼかからず、上乗せ分は約3.4万円にとどまります。
少額減価償却資産:40万円未満に拡大
青色申告の中小事業者は、少額の資産を取得した年に全額を経費にできます(年間合計300万円まで)。令和8年度改正で、対象が30万円未満から40万円未満に広がりました。40万円未満になるのは令和8年4月1日以後に取得した資産です。適用期限は令和11年3月31日までです。
| 25万円のPCを購入 | 青色申告 | 白色申告(4年で減価償却) |
|---|---|---|
| 1年目の経費 | 25万円 | 6.25万円 |
| 2〜4年目の経費 | 0円 | 各6.25万円 |
| 1年目の負担の差(売上500万円の例) | — | 約4.7万円 |
ただし、これは経費にするタイミングが早まるだけで、4年間の経費の合計は同じです。
純損失の繰越:赤字を3年間持ち越せる
青色申告なら事業の赤字を翌年から3年間繰り越せます。開業した年に赤字が出ても、翌年以降の黒字と相殺できます。白色申告では原則としてこの繰越ができません。
個人事業税は「65万円控除」では下がらない
見落としがちなのが個人事業税です。事業税は「(所得−事業主控除290万円)×5%」などで計算しますが、青色申告特別控除は差し引けません。専従者給与と減価償却は差し引けます。売上500万円の例では、白色でも青色でも事業税は5,000円で変わりません。
よくある質問(FAQ)
この記事の数字の前提データはどこから?
所得税の基礎控除は国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」、青色申告特別控除は国税庁タックスアンサーNo.2072と財務省「令和8年度税制改正の大綱」によります。国保は特別区の令和8年度料率(基礎分7.51%・支援金分2.80%・子ども子育て支援金分0.27%)、国民年金は令和8年度の月額17,920円です。住民税は標準税率で計算しています。
青色申告の申請期限はいつ?
青色申告にしたい年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署へ提出します。1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内です。令和9年分から75万円控除を受けたいなら、優良電子帳簿に対応した会計ソフトへ2027年1月までに移っておくと安心です。
副業でも青色申告はできる?
副業が事業所得として認められれば、青色申告ができます。会社員の副業は雑所得と判断されることも多く、その場合は青色申告の対象外です。副業の税金は副業の税金シミュレーターで確認できます。
数字が実感と合わない場合は?
国保の料率は自治体によって違います。また、iDeCoや生命保険料控除、扶養家族は計算に入っていません。ご自身の条件は青色申告メリット比較シミュレーターの詳細設定で入力し直してください。誤りに気づいた場合はお問い合わせからお知らせください。
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- 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- 国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251226taikou.pdf
- 国税庁リーフレット「10万円控除要件が変わります」(R8.4)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0026004-012.pdf
- 豊島区 国保運営協議会資料(特別区共通基準・令和8年度料率)https://www.city.toshima.lg.jp/documents/55129/20260327165423.pdf