第3号被保険者とは|保険料を払わず年金がもらえる仕組みと、縮小に向かう2025年改正の論点
会社員に扶養される配偶者は保険料ゼロで国民年金に加入できる——これが第3号被保険者制度。約700万人が対象で9割超が女性。誰が当てはまり、保険料を誰が負担し、なぜ『不公平』と批判されるのか。年収の壁との関係と、2025年の年金制度改正で縮小に向かう流れまで、根拠に沿って整理する。
国民年金の加入者のうち、保険料を1円も納めずに将来の基礎年金を受け取れる人が約700万人いる。第3号被保険者だ(厚生労働省「公的年金加入者数」2023年度末)。そのうち9割以上が女性で、専業主婦・主夫やパート勤務の配偶者が大半を占める。
「払っていないのにもらえる」というこの制度は、長く当たり前のものとして運用されてきた。だが2024年の財政検証と2025年の年金制度改正の議論を経て、いまや縮小に向かう前提で語られるようになっている。自分や配偶者がこの区分に当てはまるなら、仕組みと今後の方向を知っておく価値は大きい。この記事では、第3号被保険者とは何か、誰が負担しているのか、そしてなぜ見直されようとしているのかを、制度の根拠に沿って解きほぐす。
まず「3つの号」を整理する
国民年金(基礎年金)の加入者は、働き方によって3つの区分に分かれる。これは健康保険の話ではなく、あくまで年金の被保険者区分である点に注意したい。
| 区分 | 該当する人 | 保険料の納め方 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 自営業・フリーランス・学生・無職など | 自分で定額(2026年度 月17,920円)を納付 |
| 第2号被保険者 | 会社員・公務員(厚生年金加入者) | 給与天引き(労使折半) |
| 第3号被保険者 | 第2号に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者 | 負担なし(ゼロ円) |
第3号被保険者になるには、ざっくり次の条件を満たす必要がある。
- 配偶者が第2号被保険者(会社員・公務員)であること
- 本人が20歳以上60歳未満であること
- 年収が原則130万円未満で、配偶者に扶養されている(生計を維持されている)こと
つまり、第3号は「自営業者の配偶者」には適用されない。自営業者(第1号)の妻・夫は、たとえ専業主婦・主夫でも自分で第1号として保険料を納める。同じ専業主婦でも、配偶者の働き方しだいで負担がまったく変わる——ここが制度のクセであり、後述する不公平論の入り口でもある。
保険料ゼロでも、もらえる年金は満額
第3号被保険者の最大の特徴は、保険料を払わないのに、納めた人と同じ基礎年金が積み上がることだ。
老齢基礎年金は「保険料を納めた月数(免除・第3号期間を含む)÷ 480ヶ月 × 満額」で計算される。満額は毎年度改定され、2026年度(令和8年度)は年847,300円(月70,608円・昭和31年4月2日以後生まれ)。第3号でいた期間は、第1号や第2号と同じく「納付済み」と同等に扱われる。
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例:22歳〜60歳まで38年間ずっと第3号だった場合
加入月数 = 38年 × 12 = 456ヶ月
基礎年金 = 満額 × 456 / 480 ≒ 年80.5万円(月約6.7万円)
→ 自己負担した保険料は0円
```
第1号として同じ38年分を自分で納めると、保険料は概算で月17,920円(2026年度) × 456ヶ月 ≒ 約817万円。第3号はこれを払わずに、ほぼ同じ年金を確保できる計算になる。自分が将来受け取れる基礎年金・厚生年金の見込みは年金受給額シミュレーターで、受給開始を遅らせた場合の増額は年金繰り上げ・繰り下げシミュレーターで試算できる。
では、誰がその保険料を負担しているのか
第3号本人が払わない以上、その分の年金原資はどこかから出ている。答えは——厚生年金の加入者全体だ。
第2号被保険者が納める厚生年金保険料の一部は「基礎年金拠出金」としてプールされ、そこから第1号・第2号・第3号すべての基礎年金が賄われる。第3号の分だけを配偶者の会社や本人が追加負担しているわけではなく、独身の会社員も、共働きの会社員も、等しく負担している構造になっている。
ここに批判が集まる。
- 共働き世帯:夫婦とも第2号として保険料を負担しているのに、片働き世帯の第3号の分まで支えている
- 単身者:扶養する配偶者がいないのに、他人の配偶者の年金原資を負担している
- 自営業の配偶者(第1号):同じ専業でも自分で保険料を払っている
「働き方や世帯構成によって有利・不利が生まれる」という不公平感が、制度創設(1986年)から40年を経ていよいよ無視できなくなった、というのが現在地である。
「年収の壁」と第3号は表裏一体
第3号でいられるかどうかは、本人の年収で決まる。ここで登場するのが、いわゆる「年収の壁」だ。
| 壁 | 内容 | 超えるとどうなるか |
|---|---|---|
| 106万円の壁 | 一定規模の勤務先でのパート等の社会保険加入基準 | 自分で厚生年金・健康保険に加入(第2号へ) |
| 130万円の壁 | 被扶養者認定の基準(全国一律) | 扶養を外れ、自分で社会保険料を負担 |
130万円(または106万円)を超えて働くと、第3号から外れて第2号(または第1号)になり、保険料の自己負担が発生する。この「手取りが逆転する境目」を避けるために就業時間を抑える人が多く、人手不足の一因とも指摘されてきた。壁を超えて働いた場合に手取りがどう動くかは年収の壁シミュレーターで具体的に確認できる。なお、税金の側の配偶者控除・配偶者特別控除は別の基準で動くので、配偶者控除シミュレーターとあわせて見ると全体像がつかめる。
2025年改正で何が変わったか
2025年(令和7年)の年金制度改正では、第3号被保険者制度そのものは廃止されなかった。いきなり数百万人の負担を増やす激変は避けられた形だ。ただし、流れは明確に「縮小」へ向かっている。
- 被用者保険の適用拡大 —— パート等が厚生年金に入る際の「企業規模要件」を段階的に撤廃する方向。これにより106万円前後で働く人が第2号に移り、第3号の対象者は自然に減っていく。
- 第3号は経過的な制度という位置づけの明確化 —— 将来的な縮小・見直しを前提に、適用拡大とセットで段階的に役割を縮める整理。
- 女性の就労拡大という社会変化 —— 共働きが多数派となり、「片働き+専業配偶者」を標準モデルとした制度の前提が崩れている。
つまり「明日いきなり保険料が発生する」わけではないが、長い目で見れば第3号は縮んでいく制度だと考えておくのが現実的だ。すでに自分で社会保険に加入して働く(第2号になる)場合の手取りと将来の年金増を、片働きのままと比べておく意味は大きい。会社員と自営・フリーランスで負担と給付がどう違うかは正社員 vs フリーランス比較シミュレーターが参考になる。
第3号の人が今からできる備え
制度の縮小をただ待つのではなく、できることがある。
- 付加年金・国民年金基金は使えない点に注意:これらは第1号向け。第3号のうちにできる「年金の上積み」は限られる。第1号の人が使える上積みの効果は付加年金シミュレーターで確認できる。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)は第3号でも加入可能:掛金は所得控除にならない(本人に課税所得がないため)が、運用益非課税のメリットは受けられる。老後資金の自助努力として有力。
- 働き方を見直すなら早めに:壁を超えて第2号になると、自分名義の厚生年金が積み上がる。将来の上乗せ分を「保険料の負担」とだけ捉えず、給付増との差し引きで判断したい。
よくある質問
Q. 第3号でいた期間は、将来の年金に本当に反映されますか?
A. されます。第3号期間は保険料納付済期間として扱われ、老齢基礎年金の計算に算入されます。受給資格期間(原則10年)にもカウントされます。
Q. 配偶者が会社を辞めて自営業になったら、私はどうなりますか?
A. 配偶者が第2号でなくなると、扶養する側がいなくなるため、あなたは第1号被保険者に切り替わり、自分で国民年金保険料を納める必要があります。届け出を忘れると未納期間になるので注意してください。
Q. パートで130万円を少し超えそうです。第3号のままでいるべき?
A. 一概には言えません。超えると保険料負担が生じる一方、自分の厚生年金が増え、傷病手当金などの保障も得られます。短期の手取りだけでなく、将来の給付増まで含めて判断するのが妥当です。境目の手取り変化は年収の壁シミュレーターで試算を。
Q. 第3号は本当に廃止されるのですか?
A. 2025年の改正時点では廃止されていません。ただし適用拡大によって対象者は減り続けており、将来的な縮小・見直しが検討課題として残っています。「いずれ縮む制度」という前提で老後設計を組むのが安全です。
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出典・根拠:第3号被保険者の定義・要件は国民年金法(被保険者の種別)および日本年金機構「国民年金第3号被保険者」、加入者数は厚生労働省「公的年金加入者数」(2023年度末)に基づく。基礎年金拠出金による費用負担の仕組みは厚生労働省「公的年金制度の財政」による。被用者保険の適用拡大・年金制度改正の方向性は、社会保障審議会年金部会の議論および2025年(令和7年)の年金制度改正に基づく。保険料額・基礎年金満額は年度ごとに改定されるため、最新の公表値を必ず確認してほしい。