第3号被保険者とは|保険料0円で基礎年金月7.1万円・対象約700万人|106万円の壁撤廃で「週20時間」が分岐点に【2026年度】
第3号被保険者とは、会社員・公務員(第2号)に扶養される年収130万円未満・20〜60歳の配偶者で、国民年金保険料(2026年度 月17,920円)を払わずに老齢基礎年金(満額 月70,608円)が積み上がる区分。対象約700万人・9割超が女性。38年間第3号なら自己負担0円で年約80.5万円の年金、第1号なら保険料約817万円。誰が負担しているのか、2026年10月1日の106万円の壁(賃金要件)撤廃で週20時間が分岐点になったこと、2026年4月からの130万円の労働契約ベース判定、企業規模要件の縮小スケジュールまで根拠から整理する。
第3号被保険者とは、会社員・公務員に扶養される20歳以上60歳未満・年収130万円未満の配偶者で、国民年金保険料(2026年度 月17,920円)を1円も払わずに老齢基礎年金(満額 月70,608円)が積み上がる区分だ。
国民年金の加入者のうち、保険料を1円も納めずに将来の基礎年金を受け取れる人が約700万人いる。第3号被保険者だ(厚生労働省「公的年金加入者数」2023年度末)。そのうち9割以上が女性で、専業主婦・主夫やパート勤務の配偶者が大半を占める。
「払っていないのにもらえる」というこの制度は、長く当たり前のものとして運用されてきた。だが2024年の財政検証と2025年の年金制度改正の議論を経て、いまや縮小に向かう前提で語られるようになっている。自分や配偶者がこの区分に当てはまるなら、仕組みと今後の方向を知っておく価値は大きい。この記事では、第3号被保険者とは何か、誰が負担しているのか、そしてなぜ見直されようとしているのかを、制度の根拠に沿って解きほぐす。
第3号被保険者になる条件は?——まず「3つの号」を整理する
国民年金(基礎年金)の加入者は、働き方によって3つの区分に分かれる。これは健康保険の話ではなく、あくまで年金の被保険者区分である点に注意したい。
| 区分 | 該当する人 | 保険料の納め方 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 自営業・フリーランス・学生・無職など | 自分で定額(2026年度 月17,920円)を納付 |
| 第2号被保険者 | 会社員・公務員(厚生年金加入者) | 給与天引き(労使折半) |
| 第3号被保険者 | 第2号に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者 | 負担なし(ゼロ円) |
第3号被保険者になるには、ざっくり次の条件を満たす必要がある。
- 配偶者が第2号被保険者(会社員・公務員)であること
- 本人が20歳以上60歳未満であること
- 年収が原則130万円未満で、配偶者に扶養されている(生計を維持されている)こと
つまり、第3号は「自営業者の配偶者」には適用されない。自営業者(第1号)の妻・夫は、たとえ専業主婦・主夫でも自分で第1号として保険料を納める。同じ専業主婦でも、配偶者の働き方しだいで負担がまったく変わる——ここが制度のクセであり、後述する不公平論の入り口でもある。
保険料0円でもらえる年金はいくら?——満額で月70,608円
第3号被保険者の最大の特徴は、保険料を払わないのに、納めた人と同じ基礎年金が積み上がることだ。
老齢基礎年金は「保険料を納めた月数(免除・第3号期間を含む)÷ 480ヶ月 × 満額」で計算される。満額は毎年度改定され、2026年度(令和8年度)は年847,300円(月70,608円・昭和31年4月2日以後生まれ)。第3号でいた期間は、第1号や第2号と同じく「納付済み」と同等に扱われ、受給資格期間(原則10年)にもカウントされる。
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例:22歳〜60歳まで38年間ずっと第3号だった場合
加入月数 = 38年 × 12 = 456ヶ月
基礎年金 = 満額 × 456 / 480 ≒ 年80.5万円(月約6.7万円)
→ 自己負担した保険料は0円
```
第1号として同じ38年分を自分で納めると、保険料は概算で月17,920円(2026年度) × 456ヶ月 ≒ 約817万円。第3号はこれを払わずに、ほぼ同じ年金を確保できる計算になる。自分が将来受け取れる基礎年金・厚生年金の見込みは年金受給額シミュレーターで、受給開始を遅らせた場合の増額は年金繰り上げ・繰り下げシミュレーターで試算できる。
第3号の保険料は誰が負担しているのか?
第3号本人が払わない以上、その分の年金原資はどこかから出ている。答えは——厚生年金の加入者全体だ。
第2号被保険者が納める厚生年金保険料の一部は「基礎年金拠出金」としてプールされ、そこから第1号・第2号・第3号すべての基礎年金が賄われる。第3号の分だけを配偶者の会社や本人が追加負担しているわけではなく、独身の会社員も、共働きの会社員も、等しく負担している構造になっている。
ここに批判が集まる。
- 共働き世帯:夫婦とも第2号として保険料を負担しているのに、片働き世帯の第3号の分まで支えている
- 単身者:扶養する配偶者がいないのに、他人の配偶者の年金原資を負担している
- 自営業の配偶者(第1号):同じ専業でも自分で保険料を払っている
「働き方や世帯構成によって有利・不利が生まれる」という不公平感が、制度創設(1986年)から40年を経ていよいよ無視できなくなった、というのが現在地である。
「年収の壁」と第3号の関係は?——週20時間・130万円で何が起きるか
第3号でいられるかどうかは、本人の年収で決まる。ここで登場するのが、いわゆる「年収の壁」だ。
| 壁 | 内容 | 超えるとどうなるか |
|---|---|---|
| 週20時間の壁(旧106万円の壁) | 従業員51人以上の勤務先で週20時間以上働くと社会保険に加入。月額賃金8.8万円の要件は2026年10月1日に撤廃済みで、年収は問われない | 自分で厚生年金・健康保険に加入(第2号へ) |
| 130万円の壁 | 被扶養者認定の基準(全国一律)。2026年4月から労働契約の時給×所定労働時間で判定し、臨時の残業代は含めない | 扶養を外れ、自分で社会保険料を負担(勤務先で加入できなければ第1号へ) |
週20時間以上(51人以上の勤務先)または年収130万円以上で働くと、第3号から外れて第2号(または第1号)になり、保険料の自己負担が発生する。この「手取りが逆転する境目」を避けるために就業時間を抑える人が多く、人手不足の一因とも指摘されてきた。壁を超えて働いた場合に手取りがどう動くかは年収の壁シミュレーターで具体的に確認できる。106万円の壁が2026年10月に撤廃された経緯と、加入で増える保険料・年金額は106万円の壁撤廃を検算した記事にまとめている。なお、税金の側の配偶者控除・配偶者特別控除は別の基準で動くので、配偶者控除シミュレーターとあわせて見ると全体像がつかめる。
2025年改正と2026年の施行で第3号はどう変わったか?
2025年(令和7年)の年金制度改正では、第3号被保険者制度そのものは廃止されなかった。いきなり数百万人の負担を増やす激変は避けられた形だ。ただし、流れは明確に「縮小」へ向かっており、2026年に具体的な施行が始まった。
- 賃金要件の撤廃(2026年10月1日施行)と企業規模要件の縮小 —— 51人以上の企業では週20時間以上働けば年収に関係なく第2号になる。企業規模要件も2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上、2035年10月に全企業へと縮小が決まっている。週20時間以上働く第3号の人は、勤務先の規模に応じて順に第2号へ移っていく。
- 第3号は経過的な制度という位置づけの明確化 —— 将来的な縮小・見直しを前提に、適用拡大とセットで段階的に役割を縮める整理。
- 女性の就労拡大という社会変化 —— 共働きが多数派となり、「片働き+専業配偶者」を標準モデルとした制度の前提が崩れている。
つまり「明日いきなり保険料が発生する」わけではないが、長い目で見れば第3号は縮んでいく制度だと考えておくのが現実的だ。すでに自分で社会保険に加入して働く(第2号になる)場合の手取りと将来の年金増を、片働きのままと比べておく意味は大きい。会社員と自営・フリーランスで負担と給付がどう違うかは正社員 vs フリーランス比較シミュレーターが参考になる。
2026年10月以降、第3号から外れるのはどんな人か
具体的な判定は次の順で考えるとわかりやすい。
| 働き方 | 2026年10月以降の区分 |
|---|---|
| 週20時間未満・年収130万円未満の見込み | 第3号のまま |
| 週20時間以上・勤務先51人以上(年収80万円でも) | 第2号(勤務先の厚生年金に加入) |
| 週20時間以上・勤務先50人以下・年収130万円未満 | 第3号のまま(規模要件の縮小時期が来たら第2号) |
| 勤務先で加入しない働き方・年収130万円以上の見込み | 第1号(国民年金を自分で納付) |
第2号に移ると、厚生年金は標準報酬月額の下限8.8万円で計算されるため、月収7〜8万円台でも本人負担は月約1.2万円(40歳未満・協会けんぽ全国平均)になる。その代わり、基礎年金に上乗せして厚生年金が加入1年あたり年約5,800円ずつ増える。50人以下の事業所が2026年10月以降に任意で加入対象を広げた場合や、2027年10月以降の規模縮小で新たに対象となった場合は、「保険料調整制度」で最長3年間、月収13万円未満の人の本人負担が軽減される(月収8.8万円なら1・2年目は月約6,250円)。
なお、税金の配偶者控除は2026年分から配偶者の給与136万円以下が対象で、社会保険の130万円より上にある。「税の扶養には入っているのに第3号からは外れる」ことが起こりうるので、2つの扶養は別々に確認したい(税と社保の扶養の違いの記事)。
第3号の人が今からできる備え
制度の縮小をただ待つのではなく、できることがある。
- 付加年金・国民年金基金は使えない点に注意:これらは第1号向け。第3号のうちにできる「年金の上積み」は限られる。第1号の人が使える上積みの効果は付加年金シミュレーターで確認できる。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)は第3号でも加入可能:掛金は月23,000円まで。所得控除の恩恵はない(本人に課税所得がないため)が、運用益非課税のメリットは受けられる。老後資金の自助努力として有力で、積立額ごとの結果はiDeCoシミュレーターで確認できる。
- 働き方を見直すなら早めに:壁を超えて第2号になると、自分名義の厚生年金が積み上がる。将来の上乗せ分を「保険料の負担」とだけ捉えず、給付増との差し引きで判断したい。
よくある質問
Q. 配偶者が会社を辞めて自営業になったら、私はどうなりますか?
A. 配偶者が第2号でなくなると、扶養する側がいなくなるため、あなたは第1号被保険者に切り替わり、自分で国民年金保険料を納める必要があります。届け出を忘れると未納期間になるので注意してください。
Q. 週20時間以上働くと、年収が低くても第3号から外れますか?
A. 勤務先が従業員51人以上なら外れます。2026年10月1日に月額賃金8.8万円の要件が撤廃されたため、週20時間以上・2か月超の雇用見込み・学生でないという条件を満たせば、年収にかかわらず勤務先の厚生年金に加入して第2号になります。50人以下の勤務先なら、規模要件の縮小時期(最短2027年10月)までは年収130万円未満で第3号のままでいられます。
Q. パートで130万円を少し超えそうです。第3号のままでいるべき?
A. 2026年4月からは、労働契約の時給×所定労働時間で見込み年収を判定し、臨時の残業代は含めない扱いになりました。契約内容が130万円未満なら、一時的な残業で超えても第3号に残れます。そのうえで超えて働くかどうかは一概には言えません。超えると保険料負担が生じる一方、自分の厚生年金が増え、傷病手当金などの保障も得られます。短期の手取りだけでなく、将来の給付増まで含めて判断するのが妥当です。境目の手取り変化は年収の壁シミュレーターで試算を。
Q. 第3号は本当に廃止されるのですか?
A. 2025年の改正時点では廃止されていません。ただし適用拡大によって対象者は減り続けており、将来的な縮小・見直しが検討課題として残っています。「いずれ縮む制度」という前提で老後設計を組むのが安全です。年金全体の受給額・受け取り方・増やし方は年金のお金完全ガイドで整理しています。
Q. 「3号」「専業主婦の年金」「被扶養配偶者」は同じ意味ですか?
A. ほぼ同じものを指します。正式名称は国民年金の「第3号被保険者」(第三号被保険者)で、日常的には「3号」「サンゴウ」「専業主婦(主夫)の年金」「扶養に入っている配偶者」などと呼ばれます。健康保険の「被扶養者」と要件がほぼ重なるため、勤務先の手続きでは「被扶養者(異動)届」と「第3号被保険者関係届」がセットで出されます。
Q. 第3号になる・やめるときの手続きは?
A. 本人ではなく、配偶者(第2号)の勤務先を通じて日本年金機構に「国民年金第3号被保険者関係届」を提出します。結婚・退職で扶養に入るとき、収入増や配偶者の退職で扶養を外れるとき、いずれも届出が必要です。外れたのに届出を忘れると、その期間が未納扱い(いわゆる3号不整合記録)になり将来の年金が減るので注意してください。
Q. この記事の数字の根拠はどこから?
A. 国民年金保険料 月17,920円と老齢基礎年金満額 年847,300円(月70,608円)は日本年金機構が公表する2026年度(令和8年度)の額、加入者数約700万人は厚生労働省「公的年金加入者数」(2023年度末)、賃金要件の撤廃と保険料調整制度は日本年金機構の告知・チラシ(2026年10月2日に確認)です。38年間第3号のケースの年80.5万円は 847,300円×456/480、第1号なら約817万円は 17,920円×456ヶ月で計算しています。
Q. 数字が実感と合わない場合は?
A. 保険料と満額は毎年度改定されるため、2027年度以降は本記事の金額から少しずつずれます。加入月数の数え方(免除・学生納付特例期間の扱い)や、2003年3月以前の厚生年金加入分の計算式の違いでも誤差が出ます。自分の見込み額は年金受給額シミュレーターで条件を変えて確認し、記事の計算に疑問があればお問い合わせからお知らせください。
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出典・根拠:第3号被保険者の定義・要件は国民年金法(被保険者の種別)および日本年金機構「国民年金第3号被保険者」、賃金要件の撤廃は日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」、加入者数は厚生労働省「公的年金加入者数」(2023年度末)に基づく。基礎年金拠出金による費用負担の仕組みは厚生労働省「公的年金制度の財政」による。被用者保険の適用拡大・年金制度改正の方向性は、社会保障審議会年金部会の議論および2025年(令和7年)の年金制度改正に基づく。保険料額・基礎年金満額は年度ごとに改定されるため、最新の公表値を必ず確認してほしい。